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猿猴橋 90年の時を超えて 「広島一」の姿に復元

 90年前の姿に復元された広島市南区の猿猴橋。デルタの歴史とともにある橋の復元を、大勢の人々が喜び合った。

 橋のシンボルは青銅製のタカの像。地球儀のような球体をつかみ、力強い視線を大空に向ける。地元の住民グループが収集した戦前の写真を基に、広島市立大芸術学部の教授が復元を監修した。橋の四隅にある親柱に1基ずつ据えられ、親柱を含めた高さは5メートルを超す。再開発で高層ビルが林立するようになったJR広島駅前で威容を誇る。

 1926(大正15)年に建造され、その華麗さから「広島一の橋」とうたわれた猿猴橋。装飾は43年、戦況の悪化を理由に、国が取り上げた。橋は彩りを失ったが、原爆の猛威にも耐えた。多くの被爆者が避難のため橋を渡り、終戦直後には周囲に広がった闇市で市民は生活物資を求めた。

 橋の欄干などを構成する色あせた石材は、復元工事を機に洗浄され、架橋当時の輝きを取り戻した。大正から昭和、平成へ。猿猴橋は生まれ変わった。変貌を続ける広島駅前のランドマークとして、市民の心に残るだろう。(写真・今田豊、山本誉、山下悟史、山崎亮、文・石川昌義)

(2016年4月13日中国新聞セレクト掲載)

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