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社説・コラム

『想』 奥大地(おく・だいち) サンフレを平和大使に

 サンフレッチェ広島はきょう、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の初戦を迎える。世界中で愛されるサッカーというスポーツで、広島のクラブが日本のチャンピオンとして晴れ舞台に立つ意味は大きい。

 「HIROSHIMA」は、広島の人が思う以上に世界で知られている。人類史上、初めて原爆を投下された都市。その街にサッカークラブがあり、被爆70年を経て国の代表として頑張っている―。海外でこうした事実を知り、驚き、励まされる人は多いだろう。クラブワールドカップで3位に輝いた昨年暮れ、森保一監督は「平和都市広島を発信」を繰り返していた。

 ことしは初めて、8月6日にホームゲームがある。サンフレッチェは広島のメッセンジャーになってはどうだろう。

 遠征時に、8月6日の広島市長の平和宣言を開催都市に届ける、広島市や国際協力機構(JICA)のような団体が同行する…。実現すれば、試合以外の取材、報道が期待でき、人々の目に触れる機会が増える。

 まずクラブが行動する手もある。クラブの理念に、「平和への誓い」を盛り込むのもいいと思う。ホームゲームの日、選手を乗せたバスは必ず平和記念公園(中区)の前を通ってエディオンスタジアム広島(安佐南区)に向かう。

 サンフレッチェは、ラフプレーの少ないクラブに贈られるフェアプレー賞・高円宮杯を、昨季まで4年連続でリーグ最多の5度、受賞している。後ろから引っかけなくてもちゃんと勝てる強さを持っている。その意味でも、平和を語る資格がある。

 広島と海外の高校生世代が競う平和祈念広島国際ユースサッカーは10年続く。参加選手は平和記念公園に行き、被爆者の証言を聴く。多感な時期に広島を経験した彼らは、「核兵器OK」とはきっと言わないと信じる。

 プロのサッカー選手は、自治体や政治家が思っているよりずっと発信力がある。海外で戦う実力をつけたサンフレッチェは、サッカーを超えて広島に貢献できるはすだ。(イベント企画「ベアフット」ディレクター)

(2016年2月23日中国新聞セレクト掲載)

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