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全国戦没者追悼式 悲惨な別れ 忘れない 中国地方417人参列

 終戦の日の15日、東京都千代田区の日本武道館であった全国戦没者追悼式に、中国地方から417人が参列した。戦地や空襲で犠牲になった肉親をしのぶとともに平和な世界を未来に引き継ぐ決意を新たにした。(坂田茂、藤村潤平、山本和明)

 「突撃したのか、焼け死んだのか」。広島県代表で献花した田辺恵士さん(75)=府中市=は、激戦地の硫黄島で戦死した父得郎さんに思いをはせた。遺骨は戻らず、墓には戦地に赴く前に切った髪と爪を入れた。4年前に島を訪れたが「戦闘の跡が凄惨(せいさん)すぎて、父の最期は想像がつかなかった」と、やりきれなさをにじませた。

 鳥取県代表の宮脇洋一さん(71)=湯梨浜町=も、父義一さんがフィリピン・ルソン島で戦死した。召集に応じたのは、宮脇さんが生まれて間もないころ。「父との思い出さえない。私のような遺児を出してはいけない」

 戦時中の胸のけがが原因で、終戦6年後に父米吉さんを亡くした島根県代表の瀬尾喜美さん(80)=安来市。「肉親の無残な死を受け入れざるを得なかった遺族は周囲にたくさんいる。どうか安らかに眠ってほしい」と祈った。

 山口県代表の池岡功次さん(49)=平生町=は、徳山空襲で軍属だった看護師の祖母和田ヨネ子さんを失った。「入院患者と避難した防空壕(ごう)が爆弾で崩れて窒息死したと聞いている。むごい」。31歳で逝った祖母を悼んだ。

 終戦から68年。日本を取り巻く現状を懸念する声も上がる。兄昇さんがフィリピンで戦死した岡山県代表の戸田博福(ひろとみ)さん(83)=美咲町=は、沖縄県・尖閣諸島をめぐって悪化する日中関係が気になる。「話し合いで解決すべきだ。二度と戦争をしてはいけない」と力を込めた。

 核兵器の非人道性に世界があらためて注目する一方、米国や北朝鮮は核実験を繰り返している。25年前、被爆者の母通子(みちこ)さんを心臓疾患で亡くした原爆死没者遺族代表の松木丈夫(たけお)さん(69)=広島市南区=は「世界中の人が広島を訪れ、被爆の実相に触れてもらいたい」と訴えた。

(2013年8月16日朝刊掲載)

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