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全国戦没者追悼式 首相式辞に不信感 広島の被爆者

 「なぜ今」「改憲への布石か」。政府主催の全国戦没者追悼式で安倍晋三首相が15日読み上げた式辞に「不戦の誓い」の文言がなかったことに対し、原爆の悲惨さを訴え、平和の大切さを説いてきた広島の被爆者には不信感が広がった。

 広島県被団協の坪井直理事長(88)は「私たちは『不戦』を訴え続けてきた。腹立たしいという気持ちしかない」。改憲や自衛隊の「国防軍」への改称などに言及してきた安倍首相の姿勢に危機感を感じており、「式辞では『恒久平和』を訴えているが信用できない」と嘆いた。

 もう一つの県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長(73)は歴代首相が触れてきたアジア諸国への加害と反省を明言しなかった点と合わせ、「憲法9条改正に意欲を示す姿勢の裏返しだ」と受け止める。「多くの市民が犠牲になった戦争を反省し、核兵器廃絶、9条堅持を訴えてきた被爆者の運動とは対極の言動だ」と批判した。

 15日、広島市中区の平和記念公園で「平和の鐘」を突き、不戦を誓う集いを開いた広島ユネスコ協会の北川建次会長(78)は「あの戦争の教訓が風化しているのではないか。不戦は日本にとって普遍の原理であるべきだ。おろそかにしていると、誤った歴史を繰り返してしまう」と危ぶんだ。

(2013年8月16日朝刊掲載)

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