『想』 鈴木章純(すずき・あきずみ) タイ里子支援の感動
18年6月14日
1983年、タイ国仏教青年会から原爆を学ぶため映画を送ってほしいとの要望が、広島市仏教会にありました。これを機縁に翌年、広島日タイ友好協会が生まれました。会員約100人のうち4割が各宗派の住職という異色の会ですが、そのおかげで、タイの前国王が設立された「国民会議」の特別会員にしていただきました。
主な事業は、タイ人留学生との交流と、学資援助です。学資援助は現地の女子中学生に限定しています。親の借金のために日本へ送られ、悲惨な境遇に陥る少女がいることを知り、「より良い就職を」と始めました。こちらから送る浄財が全額子供(里子)に渡るのが特徴です。
里子は、国民会議が支援地域の教師と連携し、経済的に苦しい家庭の子供の中から勉学意欲などを基に選考します。選ばれた子供の担任が通帳を管理し、毎月お金を支給します。親に渡すと生活費や酒代に使われる恐れがあるからです。24年間で2千人の里子を支援できました。
3年に1度、里子の多い最北部の地域も訪れます。里子と保護者、教師に訓話をするのですが、保護者には、どんなに借金がつらくても、絶対に娘を手放さないよう求めます。家庭環境や学校生活について尋ねる懇談もあります。「一生懸命勉強して看護師になりたい」「国や両親のために働きたい」と澄んだまなざしで語る少女たちを見ると、「来て良かった」とこの上ない喜びがこみ上げてきます。
結婚し、子連れで訪ねてくれる元里子もおり、その幸せそうな表情を見ていると胸に迫る感動を覚えます。今月22日にも訪問団が援助金を携え出発します。広島の音楽ユニット「大瀬戸千嶋」の協賛演奏会もあり、子供たちの心も和むでしょう。
タイも首都圏の発展は目覚ましく、東京にも比肩するほどです。しかし、農村の生活は向上していません。私たちは農村地帯を訪ねるたびに、純朴な子供や住民と触れ合い、「ほほ笑みの国」と呼ばれるこの国に迫ろうとしています。それは、自分の心の旅のようでもあります。(広島日タイ友好協会会長)
(2018年6月14日中国新聞セレクト掲載)
主な事業は、タイ人留学生との交流と、学資援助です。学資援助は現地の女子中学生に限定しています。親の借金のために日本へ送られ、悲惨な境遇に陥る少女がいることを知り、「より良い就職を」と始めました。こちらから送る浄財が全額子供(里子)に渡るのが特徴です。
里子は、国民会議が支援地域の教師と連携し、経済的に苦しい家庭の子供の中から勉学意欲などを基に選考します。選ばれた子供の担任が通帳を管理し、毎月お金を支給します。親に渡すと生活費や酒代に使われる恐れがあるからです。24年間で2千人の里子を支援できました。
3年に1度、里子の多い最北部の地域も訪れます。里子と保護者、教師に訓話をするのですが、保護者には、どんなに借金がつらくても、絶対に娘を手放さないよう求めます。家庭環境や学校生活について尋ねる懇談もあります。「一生懸命勉強して看護師になりたい」「国や両親のために働きたい」と澄んだまなざしで語る少女たちを見ると、「来て良かった」とこの上ない喜びがこみ上げてきます。
結婚し、子連れで訪ねてくれる元里子もおり、その幸せそうな表情を見ていると胸に迫る感動を覚えます。今月22日にも訪問団が援助金を携え出発します。広島の音楽ユニット「大瀬戸千嶋」の協賛演奏会もあり、子供たちの心も和むでしょう。
タイも首都圏の発展は目覚ましく、東京にも比肩するほどです。しかし、農村の生活は向上していません。私たちは農村地帯を訪ねるたびに、純朴な子供や住民と触れ合い、「ほほ笑みの国」と呼ばれるこの国に迫ろうとしています。それは、自分の心の旅のようでもあります。(広島日タイ友好協会会長)
(2018年6月14日中国新聞セレクト掲載)