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社説・コラム

『想』 姫野浩(ひめの・ひろし) 90年のその先へ

 「JOFK、こちらは広島放送局であります」

 1928年7月6日、ラジオから流れたNHK広島放送局の産声です。以来、90年にわたって広島そして中国地方の皆さまに支えられながら歩み続けてまいりました。73年前には、広島の多くの企業と同様、原爆による壊滅的な被害を受けたものの、生き残った職員が5キロ北のラジオ放送局に駆け付け、約24時間後には放送を再開しました。

 私たちは今年、「さらなる進化を目指して、90年のその先へ」というキャッチフレーズを掲げました。被爆地の放送局として、核や平和問題を積極的に放送するという最大の使命を守りつつ、地域の応援団として、多様な情報・文化をこれまで以上に全国そして世界に発信します。

 今年計画している企画の一端をご紹介します。

 平和記念式典が開かれる8月6日の夜、総合テレビで全国に放送するのがドラマ「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国2018」です。原爆に翻弄(ほんろう)された女性と家族のひたむきに生きる姿を描いた、こうの史代さんの漫画を原作に、時代の一部を現代に移して再構成します。主人公を演じるのは常盤貴子さん。橋爪功さんら豪華な出演者が脇を固めます。

 11月にはNHK杯フィギュアスケート大会が28年ぶりに広島市で開催されます。ピョンチャン五輪で活躍した選手たちの名演技がグリーンアリーナによみがえります。

 12月には新4K8K衛星放送が始まります。それに先立って、この秋、広島放送局の4階に「8Kスーパーハイビジョンシアター」を開設します。250インチの大画面と22・2チャンネルの立体音響システムで、ご覧いただいた方に、あたかも現場にいるかのような臨場感を味わっていただきます。

 「マツダスタジアムでカープのゲームを観戦後、8Kで勝利の余韻を味わう」、「広響の演奏を鑑賞した後、8Kで再度感動に浸る」そんな夢が実現する日も、そう遠くないところにまで来ています。(NHK広島放送局長)

(2018年5月27日中国新聞セレクト掲載)

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