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社説・コラム

『想』 杉澤直樹(すぎさわ・なおき) スポーツで平和発信

 あの夏から73年が過ぎ昨日、終戦の日を迎えた。広島東洋カープは今月7日、2008年から続く「ピースナイター」を、中日を迎えてマツダスタジアムで開催。五回裏終了時にスタンド全体でグリーンのピースポスターが掲げられると、真っ赤に染まったスタンドが一瞬で緑に変わった。平和を祈るファンの気持ちが強く表現された。

 一方、リーグ優勝を目指し、J1でスタートダッシュに成功したサンフレッチェ広島。V・ファーレン長崎のJ1昇格を機に11日、広島・長崎での平和記念式典後初のホームゲームを「ピースマッチ」と位置付けた。

 「One Ball.One World.」をキャッチコピーに、原爆ドーム、ハト、折り鶴をあしらった特別ユニホームをまとい、今季最高2万人超のサポーターが紫に染めたスタジアムで、同じ被爆地である長崎との熱戦を制した。被爆地、被爆者への熱い思いで90分間戦い抜き、ピッチから「核兵器の廃絶」と「世界恒久平和の実現」を世界に発信した。

 さて現在、私が会長を務める広島商工会議所支店長会(県外企業の支店長等で構成)では、このカープとサンフレッチェの「人財育成」によるチームづくりに注目している。

 カープは「泥まみれのユニホーム」と形容される厳しいトレーニングで有名。ファームからのたたき上げ選手の活躍で首位を独走している。サンフレッチェはユース時代から鍛え上げ「魂の入った前線からのプレス」で走り勝つムービングフットボールを信条に、J1リーグのトップを快走中だ。

 決して、財政面でトップクラスでない両チームが、地域との一体感で成果に結びつけるプロセスと現在のポジションこそ、中国地方の中核都市広島の元気の源であるように感じる。今夏は、豪雨災害によって県内各地で大きな被害を受けたが、戦後の復興を実現してきた広島。スポーツを通じた「永続的な平和発信」「災害からの復興の実現」を確信している。(東京海上日動火災保険常務執行役員・Jリーグマッチコミッショナー)

(2018年8月16日中国新聞セレクト掲載)

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