×

社説・コラム

『想』 和田隆恩(わだ・りゅうおん) 400周年

 今年は、浅野長晟(ながあきら)公が広島城に入城して400周年に当たり、各処で記念事業が開催されています。私が住職を務めている超覚寺も、浅野家とともに紀州和歌山から移ってきた寺院で、今年が開基400周年になります。郊外に疎開していて戦火を免れた古文書にも、「元和五己未年八月八日廣島御城江入」との記述があります。浅野家上級家臣の菩提(ぼだい)寺として広島城に程近い八丁堀に寺領を賜り、以来400年間、この地に堂宇を構えています。

 しかし、1945年の原爆では本堂も墓石も吹き飛び、浅野家由来の美術品も焼失、住職一家も亡くなってしまいました。戦後20年間は空き寺でしたが、新住職が決まるまでは門徒の皆さんが守ってくださいました。昭和、平成のバブル期には幾度も地上げ攻勢に遭いましたが、その際も門徒の皆さんが頑張ってくださいました。おかげで今も寺院が護持され、法義が受け継がれています。

 実は私は、超覚寺の生まれ育ちではなく在家出身です。ご縁あって入寺して20年がたちました。開基400周年、そして「令和」への改元という節目の年に住職を務めるのは、単なる偶然にすぎません。しかし、「それらしいことを成せよ」との阿弥陀如来のお達しのように感じたりもしています。

 それに応えるよう、今年は超覚寺の400年を知ってもらえる記念寺業を予定しています。

 そのうちの一つは、動物向けのお墓の整備です。最近でこそ動物向けの供養墓は多く見受けられますが、超覚寺では江戸時代から動物の合同墓がありました。周囲の武家や商家の飼い犬が埋葬されていたのではないでしょうか。戦後そこには菩提樹や彼岸花が植わっていましたが、納骨も埋葬もできる動物向け墓苑(ぼえん)に模様替えしました。

 以前は「こんな都心部に寺があるのはもったいない」と言われました。今は「気軽にお参りできる街中だから、ありがたいのだ」と自負しています。法灯を永代絶やさぬよう、今後も精進してまいります。(浄土真宗超覚寺住職・認定臨床宗教師)

(2019年6月30日中国新聞セレクト掲載)

年別アーカイブ