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広島平和研13人執筆し新刊 被爆地の発信 多角的に論考

 被爆地は悲惨な体験をどう伝え、それが海外でどう受け止められてきたのか。そもそも「平和」の実現にはどんな手だてが必要か。広島市立大広島平和研究所は、同研究所所属の13人が多方面から執筆した「広島発の平和学―戦争と平和を考える13講」を出版した。

 広島の平和教育について、水本和実教授は戦後から現在までの主な担い手や力点の変化について論じた。永井均副所長は、広島を含めた日本は第2次世界大戦中に日本軍が占領したフィリピンの戦争被害への関心が低く、かたやフィリピンでの原爆観は厳しいものがあったと指摘する。

 脱原発を志向するドイツを巡り竹本真希子准教授は、「ヒロシマ」がエネルギーや環境問題、さらには放射線被曝(ひばく)という「人権蹂躙(じゅうりん)」の問題として受け止められがちだと説明する。

 韓国と米国、中国や東南アジア諸国の専門家の論考も掲載している。通底するのは、原爆投下を独立した被害としてではなく世界史の中でより複眼的に捉え、市民が強いられたあらゆる痛みを共有しようとする「広島発」の努力の大切さだろう。

 武力行使に関する国際法上の課題や、核兵器の保有・使用を巡る日本政府の憲法解釈についても書かれている。法律文化社刊。A5判254ページ。2310円。

(2021年10月12日朝刊掲載)

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