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島根県内の被爆者ら疑問 はだしのゲン閲覧制限

「実態伝える貴重な作品」

 被爆地・広島で生き抜く少年のたくましさを描く漫画「はだしのゲン」―。松江市教委が市内の小中学校に学校図書館での閲覧制限を求めていた事態を受け、県内の教育関係者や被爆者、平和活動に携わる人々からは疑問の声が相次いだ。

 「平和学習の教材に活用され、子どもから大人まで深くなじんだ作品のどこに問題があるのか」。県教職員組合の入江克則書記長(56)はことし2月、事実関係を市教委にただした。「表現の自由に行政が介入することに問題がある」と市教委の対応を批判する。

 教育行政に携わる立場からも異論が出た。被爆2世でもある、県西部の自治体の教委幹部は「閲覧制限は過剰反応ではないか」と心境を明かす。

 被爆者でもあり、昨年12月に73歳で亡くなった漫画家中沢啓治さんが描いた「はだしのゲン」は約20カ国語に翻訳され、原爆資料館(広島市中区)では今夏、中沢さんの原画展が開催されている。県原爆被爆者協議会の原美男会長(86)=松江市玉湯町=は「被爆の実態を広く伝える貴重な作品」と評価する。

 2011年に広島市から美郷町に引っ越し、平和をテーマにした絵本の読み聞かせを続ける梅原信子さん(65)は「残酷に見える表現の背景には、戦争の非人間性がある。戦争と被爆の事実は、大人として次世代に伝えなければならない」と訴えた。(石川昌義、黒田健太郎、松島岳人)

(2013年8月17日朝刊掲載)

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