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被災地見学ツアー 三原の小中生に同行ルポ 教訓つなぐ学びの場

 「東北を旅する」という支え方がある―。東日本大震災の被災地から招く声が聞こえる。だが物見高い観光客は一時、批判の的にもなった。今は大丈夫なのか。夏休みに宮城へと向かった三原市の小中学生に同行し、現地を訪ねてみた。(石丸賢、写真も)

「支える」考え直す契機に

宮城の住民自ら案内や体験談

 「子どもらを震災の現場に立たせたい」。三原市のまちづくりグループ「兎(と)っ兎(と)」の呼び掛けに地元の小学1~中学2年生の男女9人と、賛同した市民10人が参加。今月1、2の両日、津波で深手を負った沿岸部を貸し切りバスで回った。

 濁流にのまれた名取市閖上(ゆりあげ)地区を案内してくれたのは長沼俊幸さん(50)。家ごと約2キロ流され、命拾いした。水道工事業の傍ら、見学者への説明ボランティアに割く時間を惜しまない。「震災を風化させては、犠牲者に申し訳ないから」

語り部バス運行

 実地見学ツアーの受け入れは岩手、宮城、福島の各地で広がっている。宮城県南三陸町では、被災前に観光ガイドだった住民たちが今は「語り部ガイド」と名乗っていた。

 同町の観光ホテル観洋は独自の語り部バスを出す。おかみの阿部憲子さん(51)も自ら、ホテルを5カ月ほど避難所として開放した体験を語る。

 子どもを主体に訪れた三原からのツアー客に阿部さんは目を細めた。「千年に一度の災害は千年に一度の学びの場でもある。伝え残すには教育しかありませんから」

 旅先で会う人、会う人が「もう誰にも同じ目に遭わせたくない」と口をそろえる。そう言う瞳には決まって涙が浮かんだ。旅人に語り掛ける時間が、家族や友をしのび、自分を癒やすことにつながっているのかもしれない。

浜清掃も手伝う

 一行は、津波にのまれた南三陸町の3階建て防災対策庁舎や児童・教職員84人が亡くなった石巻市の大川小でも花を手向け、こうべを垂れた。

 「震災の爪痕がトラウマ(心の傷)にならないか」。心配もしたが、子どもたちの旅日記を見せてもらった限りでは取り越し苦労だった。海水浴場の再生をめざす地元住民が、浜の掃除を手伝わせてくれたおかげもあるのだろう。

 3月11日が誕生日でもある小学5年生の鹿林結衣菜さん(10)はこんなふうに書いている。「見聞きしたことをいろんな人に伝える日にしたい」

 旅という支え方は、何も買い物でお金を落とせば「復興」につながるというだけのものではあるまい。震災の教訓を次につなぐ思いがあるかどうか。互いの胸に響き、残る旅のスタイルを考え直す好機にもなる気がする。

(2013年8月17日朝刊掲載)

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