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有識者は「撤去は不適切」指摘 はだしのゲン閲覧制限 松江市教委の事前相談に

 松江市教委が漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を小中学校に要請していた問題で、市教委が「ゲン」の学校図書館からの撤去を事前に有識者と相談し、「図書館の自由に基づけば不適切」と指摘されていたことが18日、分かった。市教委はその後、独自の判断で閲覧制限の要請に踏み切ったとしている。

 市教委によると、担当者が昨年11月12日、図書館学を専門とする県内の短大講師と面会。日本図書館協会が図書館運営の基本を定めた「図書館の自由宣言」で、図書館に資料の収集、提供の自由が保障されている趣旨から「撤去は不適切」とされたという。市教委は「当初から撤去しない方針で、その論拠を補強するためだった」としている。

 また同10月には図書館を持つ市内の49小中学校に「ゲン」の保有状況と描写への意見を聞くアンケートを発送。同月末までに描写への賛否が寄せられたという。

 市教委は「ゲン」の撤去を求めた市民の陳情が市議会で不採択となった同12月以降も対応を協議した。理由を古川康徳副教育長は「歴史認識を問題とした陳情とは別の議論。陳情を機に確認した『ゲン』の過激な描写を問題視した」とする。専門家の指摘と協議の結果「閲覧や貸し出しの全面禁止でなければ図書館の自由を侵さない」とし、閲覧制限を要請したという。

 日本図書館協会の会員である岡山県立図書館(岡山市北区)の岡長平副館長は「図書の閲覧制限は各図書館の責任で決めるのが大原則」とする。さらに「過去に行政から制限を求められた例は記憶にない」という。

 市教委にはこの日も全国から電話やメールで52件の意見が寄せられた。大半が抗議の内容という。(樋口浩二)

≪閲覧制限要請の経過≫

2012年 8月    松江市民が「はだしのゲン」を小中学校の図書館から撤去するよう求める陳情を市議会に提出
      9月    市議会教育民生委員会が陳情の継続審査を決定
     10月    市教委が小中学校に「ゲン」への意見などを聞くアンケートを発送
     11月    市教委が「ゲン」の図書館からの撤去について有識者から意見聴取
     12月 5日 市議会本会議が陳情の不採択を全会一致で決定
     12月17日 市教委が小中学校に「ゲン」の閲覧制限を要請

(2013年8月19日朝刊掲載)

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