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平和メッセージ共鳴 広島でのワールド・ピース・コンサート 信念や祈り、音楽で一つに

「ネバー原爆」「連なるフクシマ」

 国内外の有名な歌手や演奏家が被爆地の広島市に集ったワールド・ピース・コンサート。7月27日から8月5日までの間の8公演で、計33人、16団体が音楽を通して平和を発信した。歌声や旋律とともに聴衆の胸に響いたのが、曲の合間に生の言葉で発せられたメッセージだ。(松本大典)

 「原爆はどんなことがあっても、二度と、絶対に、使ってはいけない」。米音楽界の重鎮クインシー・ジョーンズは、「ネバー」の単語を重ね、原爆を強く否定した。「互いに手を取り、力を合わせて平和をかなえよう」。フィナーレでは、世界的チャリティーソング「ウィ・アー・ザ・ワールド」の大合唱を巻き起こし、思いを分かち合った。

 広島の地で、有名なアーティストが紡ぎ出す言葉は、格別の重みと力強さがあった。原爆詩を朗読した俳優吉永小百合は「3・11以降、福島の詩も詠んでいる」と、「原発難民」などの詩を連ねた。ピアノで伴奏した坂本龍一は「広島、長崎で嫌だと思ったはずなのに、この国は福島で3度目の核被害を経験した。何とか乗り越え、世界に何かを発しないといけない」。

 歌手の石井竜也は「広島は恨みや憎しみを祈りに変え、平和の発信地となった」と強調。呉市出身の島谷ひとみは「つらい経験をした先祖が希望を捨てなかったから、私がいる」と感謝した。広島市安佐南区出身の萩原麻未は「音楽家として広島を世界に伝える方法をこれからも考えたい」と語った。

 「広島は第二の故郷」と宣言した米ロックバンド「シカゴ」の元ボーカル、ピーター・セテラは「音楽で人は一つになれる」。アジア・フィルハーモニー管弦楽団を率いた韓国人指揮者チョン・ミョンフンは「さまざまな国の演奏家のハーモニーで協調を伝えたい」と信念を説き、「ワールド・ピース・コンサートの意義もそこにある」と述べた。

<主なアーティストの平和メッセージ>

中丸三千繪       全身を尽くして世界から核兵器を追い出したい
島谷ひとみ       先祖が希望を捨てなかったおかげで私がいる
クリスタル・ケイ    音に言葉のバリアーはない。音楽はボーダーレス
ピーター・セテラ    音楽で人は一つになれる。感動を与えられる
スタニスラフ・ブーニン 人の心を癒やすのは音楽に関わる者の宿命
佐藤しのぶ       命は救えなくても、歌で生きる喜びを与えたい
秋川雅史        歌を通して前向きに生きる勇気を届けたい
小林美恵        音楽を一緒に楽しめることが何よりの平和
萩原麻未        音楽家の一人として頑張って広島を伝えたい
チョン・ミョンフン   さまざまな国の演奏家で協調を伝えたい
石井竜也        広島は恨みを祈りに、絶望を夢に変えた街
由紀さおり       当たり前のことができるのは平和だからこそ
吉永小百合       ヒロシマ、ナガサキに、フクシマの詩も加わった
坂本龍一        3度も核被害を経た国として何かを発しないと
安全地帯        死ぬまで歌い続け、平和であることをたたえたい
クインシー・ジョーンズ 原爆はもう絶対に、使ってはいけない

(2013年8月17日朝刊掲載)

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