平和メッセージ共鳴 広島でのワールド・ピース・コンサート 信念や祈り、音楽で一つに
13年8月17日
<b>「ネバー原爆」「連なるフクシマ」</b><br><br>
国内外の有名な歌手や演奏家が被爆地の広島市に集ったワールド・ピース・コンサート。7月27日から8月5日までの間の8公演で、計33人、16団体が音楽を通して平和を発信した。歌声や旋律とともに聴衆の胸に響いたのが、曲の合間に生の言葉で発せられたメッセージだ。(松本大典) <br><br>
「原爆はどんなことがあっても、二度と、絶対に、使ってはいけない」。米音楽界の重鎮クインシー・ジョーンズは、「ネバー」の単語を重ね、原爆を強く否定した。「互いに手を取り、力を合わせて平和をかなえよう」。フィナーレでは、世界的チャリティーソング「ウィ・アー・ザ・ワールド」の大合唱を巻き起こし、思いを分かち合った。 <br><br>
広島の地で、有名なアーティストが紡ぎ出す言葉は、格別の重みと力強さがあった。原爆詩を朗読した俳優吉永小百合は「3・11以降、福島の詩も詠んでいる」と、「原発難民」などの詩を連ねた。ピアノで伴奏した坂本龍一は「広島、長崎で嫌だと思ったはずなのに、この国は福島で3度目の核被害を経験した。何とか乗り越え、世界に何かを発しないといけない」。 <br><br>
歌手の石井竜也は「広島は恨みや憎しみを祈りに変え、平和の発信地となった」と強調。呉市出身の島谷ひとみは「つらい経験をした先祖が希望を捨てなかったから、私がいる」と感謝した。広島市安佐南区出身の萩原麻未は「音楽家として広島を世界に伝える方法をこれからも考えたい」と語った。 <br><br>
「広島は第二の故郷」と宣言した米ロックバンド「シカゴ」の元ボーカル、ピーター・セテラは「音楽で人は一つになれる」。アジア・フィルハーモニー管弦楽団を率いた韓国人指揮者チョン・ミョンフンは「さまざまな国の演奏家のハーモニーで協調を伝えたい」と信念を説き、「ワールド・ピース・コンサートの意義もそこにある」と述べた。 <br><br>
<主なアーティストの平和メッセージ> <br><br>
中丸三千繪 全身を尽くして世界から核兵器を追い出したい<br>
島谷ひとみ 先祖が希望を捨てなかったおかげで私がいる<br>
クリスタル・ケイ 音に言葉のバリアーはない。音楽はボーダーレス <br>
ピーター・セテラ 音楽で人は一つになれる。感動を与えられる<br>
スタニスラフ・ブーニン 人の心を癒やすのは音楽に関わる者の宿命 <br>
佐藤しのぶ 命は救えなくても、歌で生きる喜びを与えたい<br>
秋川雅史 歌を通して前向きに生きる勇気を届けたい<br>
小林美恵 音楽を一緒に楽しめることが何よりの平和<br>
萩原麻未 音楽家の一人として頑張って広島を伝えたい<br>
チョン・ミョンフン さまざまな国の演奏家で協調を伝えたい<br>
石井竜也 広島は恨みを祈りに、絶望を夢に変えた街<br>
由紀さおり 当たり前のことができるのは平和だからこそ<br>
吉永小百合 ヒロシマ、ナガサキに、フクシマの詩も加わった <br>
坂本龍一 3度も核被害を経た国として何かを発しないと<br>
安全地帯 死ぬまで歌い続け、平和であることをたたえたい <br>
クインシー・ジョーンズ 原爆はもう絶対に、使ってはいけない<br><br>
(2013年8月17日朝刊掲載)