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米、また新型核実験 4~6月 核軍縮演説の前後

 米エネルギー省傘下の核安全保障局(NNSA)がことし4~6月、強力なエックス線を発生させる特殊装置「Zマシン」を使って核兵器の性能を確かめる新たなタイプの核実験を、ニューメキシコ州のサンディア国立研究所で1回実施していたことが20日、分かった。

 NNSAが公式ホームページで明らかにした。これまでの中国新聞の取材に、同様の実験を昨年10~12月に2回実施したことを明らかにしていた。2010年以降の実施は今回で通算9回目。

 オバマ米大統領は実験と前後して6月19日、ドイツ・ベルリンでの演説で、新たな核軍縮への意欲を表明した。「核兵器なき世界」の追求を訴えながら、一方で同様の実験を繰り返して実施して既存の核兵器を維持する姿勢に、国際社会の疑問は高まりそうだ。

 新たなタイプの核実験は、オバマ氏が大統領就任後の2010年11月に初めて実施。核実験場や爆薬は必要とせず、プルトニウムを高温高圧にして核爆発に近い状況をつくりだし、反応をみる。

 NNSAは核爆発を伴わない臨界前核実験と併せて「保有する核兵器の安全性や有効性を確かめる手段」としている。オバマ政権下では、臨界前核実験も4回実施されている。(田中美千子)

【解説】矛盾に国際社会は疑念 日本の姿勢にも問題

 「核兵器なき世界」を掲げる米オバマ政権下でまたも、核実験が繰り返された。オバマ大統領は6月、ベルリンで核軍縮への意欲をアピールしたばかり。相反する行動に被爆地広島は失望している。

 オバマ氏は、ベルリン演説で「強力な核抑止力を維持する」とも述べた。核実験は既定路線なのだろう。実際、核兵器の維持管理の名目でさまざまな実験に巨額の予算を投じている。新型核兵器を開発しようとしているのではないか。国際社会は疑念の目で見ている。

 核超大国の米国が核保有の姿勢を崩さない限り、核軍縮は進まない。国際社会でもこうした現状に業を煮やし、核兵器の非人道性を切り口に核兵器廃絶を目指す動きが本格的に広がり始めた。

 被爆国日本の姿勢もまた、問われる。米国の提供する「核の傘」に安全保障を依存し、核爆発を伴わない実験を容認している。つまり核兵器の存在を認めるスタンスだ。この国も大きな矛盾を抱えている。(田中美千子)

米国の核実験
 米国は1945年に世界で初めて実施して以来、地上や地下で核実験を繰り返してきた。92年を最後に一時停止したが、97年から核物質に高性能火薬で衝撃を加える臨界前核実験を実施。核爆発が起きないため包括的核実験禁止条約(CTBT)の対象外、と主張している。近年は実験室内で核兵器の性能を検証する研究にも力を入れる。

(2013年8月21日朝刊掲載)

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