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米新型核実験 「言行不一致」「信用できない」 広島の被爆者ら失望

 米国が核兵器の性能を調べるため、特殊装置「Zマシン」を使った核実験を4~6月に実施していたことが判明した20日、被爆地広島の被爆者や市民は怒りと失望の声を上げた。同時に米国が提供する「核の傘」に固執し、抗議をしない日本政府にも不満を募らせた。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之事務局長(71)は、オバマ米大統領が「核兵器なき世界」を目標に掲げた2009年のプラハ演説後に一連の実験を重ねていると指摘。「言行不一致だ。米国自身が世界の軍拡競争に火を付けているではないか」

 「けしからん」。もう一つの県被団協(金子一士理事長)の吉岡幸雄副理事長(84)が発した怒りの言葉は、米国に限らず日本政府にも向けられた。核兵器廃絶を唱えながら、一方では核兵器の不使用を訴えた約80カ国の共同声明に賛同していない。「被爆国として訴えを果たしていない」と批判した。

 広島市中区の平和記念公園を歩いていた西区の会社員藤田和成さん(45)は「オバマ氏の軍縮姿勢に期待したのに裏切られた。何を言っても信用できない」。原爆資料館を見学した高松市の看護師岸本由香さん(33)は「米国は世界で信頼を失うだろう」と話した。

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)は「米国はロシアと配備済み戦略核の削減を進めると言いながら、その裏では核関連予算を増やしている」と指摘。「増額分を核実験に振り向けているのが実態だ。国際社会が米国に核戦略全体を改めさせるしかない」と強調した。

(2013年8月21日朝刊掲載)

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