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核廃絶決議 従来を踏襲 政府、国連に案提出 禁止条約言及せず

 松野博一官房長官は15日の記者会見で、政府が核兵器廃絶を目指す決議案を国連総会第1委員会(軍縮)に提出したことを明らかにした。決議案提出は28年連続。ことし1月発効した核兵器禁止条約への直接の言及を避けた。「核の傘」を提供する米国への配慮とみられ、発足したばかりの岸田政権も歴代政権の姿勢を踏襲した。

 提出したのは米ニューヨーク現地時間14日。松野氏は決議案について「核兵器のない世界に向けた具体的な取り組みの一つで、核保有国と非保有国の橋渡しを行うものだ」と述べた。

 核兵器禁止条約への言及がないのは米国への配慮だ、との指摘には正面から答えず「現実を変えるには核保有国の協力が必要だが、条約には一カ国も参加していない」と指摘。「わが国としては唯一の戦争被爆国として核保有国を関与させるよう努力していかなければならない。米国の信頼を得た上で核なき世界の実現へ取り組む」と述べた。

 決議案は、同条約が強く警告する「核使用による壊滅的な人道上の結末」に関しても、2019年に「深い懸念」から後退させた「認識する」との表現を維持している。決議案は11月上旬までに第1委を通過、12月までに総会で採択される見通しだが、被爆国日本の動きには軍縮推進派諸国の批判も予想される。

 被爆地選出の岸田文雄首相(広島1区)は核兵器廃絶を「ライフワーク」と訴えながらも、核保有国が条約に反対していることなどから、署名、批准に消極的な姿勢を示している。(下久保聖司)

(2021年10月16日朝刊掲載)

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