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次世代に伝える出陣学徒の記憶 柳井の町田さん 「二度と経験させたくない」

 太平洋戦争中の1943年10月21日に東京で開かれた、出陣学徒の壮行会に参加した柳井市柳井の町田保さん(97)が、当時の記憶を後世に伝えようと励んでいる。東南アジアで従軍したつらい体験とともに、「若者に二度と経験させたくない」と力を込める。(山本祐司)

 旧制山口高(現山口大)を卒業し、東京帝国大(現東京大)へ入学したばかりの19歳の時、戦況の悪化を受け徴兵された。雨が降りしきる中、壮行会のあった明治神宮外苑競技場で行進し覚悟を決めた。陸軍に入隊後、インドネシアへ運ばれ、訓練を受けた。

 命令を受け45年6月、タイへ。マラリアと闘いながら北部国境で小隊長として陣地を造った。ビルマ戦線から退く日本兵の姿は無残で「ここもそうなる」と悔やむうち、8月の終戦を迎えた。「部下を無事に帰せる」。捕虜になり500キロを歩いて南下しバンコクから復員したのは46年6月。柳井の実家で大喜びする両親と再会を果たした。

 90歳ごろから自身の戦争体験を話し始め、本にまとめた。地元の小学生や市民に講演を続ける。「どんな思いで大勢の人が亡くなったか。問題があるなら戦争ではなく、話し合いで解決するべきだ」と声を振り絞る。今月17日には柳井市文化福祉会館で約30人を前に話した。

(2021年10月20日朝刊掲載)

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