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原発被災者治療の記録出版 広島大病院の谷川教授 

 福島第1原発事故の直後、被災地に入った広島大病院高度救命救急センター長の谷川攻一教授が、被災者たちを治療した医師と看護師の体験をまとめた「医師たちの証言」を出版した。放射線の情報がない中での医療活動の混乱と苦労を伝え、原子力災害時の課題を指摘している。(永里真弓)

 日本医師会総合政策研究機構の王子野麻代研究員との共著で、A5判、211ページ。福島県立医科大の田勢長一郎教授たち計10人から事故発生の2011年3月11日から24日までの体験を聞き取り、1日ごとに整理した。

 14日は原発20キロ圏内の病院などから患者たちが避難してきた。谷川教授は南相馬市の保健所で、防護シートに包まれた患者が医療スタッフの付き添いなしで搬送されていた光景に触れ、避難方法や除染が課題と指摘する。

 医療機関が放射線検査をしていない患者の受け入れを拒んだ例(13日)、原発内でけがを負った作業員のヘリコプター搬送の混乱(16日)などを記録。緊急被曝(ひばく)医療に詳しい医師を育てる必要性を訴える。

 谷川教授は「報告書からは見えてこない生の声だ。災害はいつ、どこで起きるか分からず、この経験を役立ててほしい」と話している。3150円。広島市内の大型書店などで販売している。

(2013年8月20日朝刊掲載)

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