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「はだしのゲン」出版社へ注文相次ぐ 閲覧制限で注目 激励や歴史認識へ意見も

 松江市教委の漫画「はだしのゲン」の閲覧制限問題を受け、あらためて作品への注目が高まっている。事態が発覚した8月中旬以降、書店や出版社への問い合わせや注文が相次いでいる。

 愛蔵版全10巻などを発行する汐文社(東京)には全国から注文が寄せられている。すでに例年8月の出荷数の3倍を超える各巻約7千冊を出荷し、2千冊の増刷も進めている。

 同社には「子どもの頃に読んだので自分の子どもにも読ませたい」「原作を変えずに出版を続けて」など、100件を超える激励の意見が寄せられた。作中の歴史認識を問題視する意見も数件あったという。

 文庫版全7巻を発行する中央公論新社(東京)でも例年の2倍程度の増刷をしており、電子版のダウンロードも伸びているという。同社は「連載開始から40周年という節目も後押しした」とする。

 書店での売れ行きも好調だ。MARUZEN広島店(広島市中区)では、この1週間で全10巻のまとめ買いが5件あった。三丸晋店長は「3年前の開店以来これだけ注目されたことはない」と話す。松江市の今井書店でも各店舗に注文が寄せられており「普段は売れないが、仕入れが必要」としている。

 島根県立図書館(松江市)では、愛蔵版など27冊のうち約20冊が貸し出し中で、最大4週間待ち。同館は「8月は例年よく利用される。子どもにも人気で手に取る姿をよく見る」とする。

 「ゲン」は、昨年12月に73歳で亡くなった被爆者で漫画家の中沢啓治さんの代表作。汐文社の政門一芳社長は「平和の尊さと戦争の悲惨さを知る出会いとなる作品。中沢先生の遺志を継ぐ上でも一人でも多くの人に読んでほしい」としている。(明知隼二)

(2013年8月22日朝刊掲載)

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