社説・コラム

　コートを着た会社員がいれば和服姿や幼子をおぶった女性もいる。大勢が２列に並び、木箱に紙片を入れる。終戦翌年にあった衆院選の様子を捉えた写真が東京の昭和館で開催中の「１９４６　明日へ」展に並んでいる▲戦後の混乱の中、初めて女性が投票した選挙の熱をモノクロ写真が伝える。投票率７２・０８％。５８年に７７％近くにもなるが、最近は低調。前々回２０１４年は５２・６６％で戦後最低となり、前回もわずかな回復にとどまる▲初の男女普通選挙から７５年。きのう午前中、近くの投票所を訪れて驚いた。５０人近い列ができていた。コロナ対策で記入ブースを減らしたために混んだか、たまたま集中する時間帯だったか。盛り上がりを少し感じもしたが、どうだろう▲投票できる年齢を１８歳に引き下げて５年。過去３回の国政選挙で１８、１９歳の投票率は回を重ねるたび低下した。「＃投票に行こう」。ＳＮＳで呼び掛ける動きもあった。次世代の政治離れは果たして食い止められたか▲投票率だけでなく、投票先も大事だ。ハロウィーンの日の選挙だったが、「仮面」をかぶった候補が選ばれてはいないか。選挙で訴えた通りの政治をするかどうか、注視しなくては。

（２０２１年１１月１日朝刊掲載）