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被爆ピアノ 来年 NYで初の海外公演計画

■記者 迫佳恵

 被爆ピアノを再生している広島市安佐南区の調律師矢川光則さん(57)が、来年9月に米国・ニューヨークで初の海外公演を開く。オバマ米大統領が核兵器廃絶を訴える今を好機ととらえて決断。来月から現場で使うピアノの調整作業を始める。

 米国での開催にあたり、米中枢同時テロの被害を受けた地を選んだ。今月からピアノの輸送費などの費用の寄付を募り始めた。今後は現地の受け入れ団体や会場を探す。

 無差別に市民を襲ったテロと原爆を重ね合わせ、平和を訴える。構想では日米の演奏者が出演。一般の観客にもピアノに触れる機会を設ける。矢川さんは「被爆ピアノを通じて共感を広げ、核兵器廃絶の追い風にしたい」と願う。

 公演には今月中旬、南区段原山崎町の女性(81)から譲り受けたピアノを使う予定だ。爆心地から2.6キロの女性宅にあった。ピアノは当時、爆風で吹き飛んだ窓ガラスを浴び、けん盤のふた部分などにひっかいたような傷が多数残る。

 市の南区段原再開発事業に伴う立ち退きが迫ったため、女性が寄贈した。矢川さんは傷を残し、弦の張り替えや調律をして再生する。被爆ピアノを手掛けるのは5台目。

 11年前からピアノを探し続けるが、今回の発見は4年ぶり。近年は保管されている情報が減った。「被爆ピアノはもうあまり現存していないはずだ。最後の1台のつもりで再生する」と意気込んでいる。矢川さんTel082(848)9533。

(2009年5月25日朝刊掲載)

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