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神門通り 小学生は松やにを集めた… 戦争の爪痕 忘れないで 出雲の高嶋さんが写真集

 出雲市の写真家高嶋敏展さん(49)が県内の戦争の爪痕をまとめた写真集「忘れられた戦争」を出版した。観光客が行き交う出雲大社(同市)前の神門通りに、太平洋戦争末期に飛行機の燃料用に子どもたちが松やにを採取した跡が今も残ると伝えている。「島根の身近にも戦争があったことを知ってほしい」と思いを込める。(高橋良輔)

 神門通りの約1キロには、戦争末期に松根油を代替燃料として使うため、小学生たちに松やにを採取させた跡が残る松が65本並ぶ。写真集では、そのすべての松を小学生の目の高さで撮り、「当時の子どもたちが戦争に関わらざるを得なかった」ことを強調した。

 戦争遺跡である松の場所を自ら調査し、地図も作成。「学校から隊列を組んで採取に向かった」「こんなもので飛行機が飛ぶのかしら」と、実際に携わった人の声も載せ、戦争が人々の暮らしの身近にあったことを浮かび上がらせた。

 高嶋さんは2012年に県などの観光イベント「神話博しまね」で、観光客たちが松を素通りする姿を目の当たりにし、「伝えないといけない」と決意。自身で調査を重ね、戦後70年の15年に写真展を開いた。

 20年からは新型コロナウイルス感染症の影響で、小学生が例年広島市を訪れる修学旅行が中止に。平和学習の機会を失い、県内の戦争遺跡の資料も乏しいとして写真集を制作した。県内の全小学校と特別支援学校などに計約400冊を寄贈した。

 A4判64ページで、税込み1100円、今井書店で販売している。高嶋さんは「忘れてはいけない、戦争時の人々の思いが島根にもある。子どもたちがこの本を通して平和の大切さを考えるきっかけにしてほしい」と願った。

(2021年11月4日朝刊掲載)

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