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連載・特集

年金 もらい忘れていませんか? 柴田友都 <4> 女子挺身隊

妹の調査機に姉の記録も

 埋もれた年金を捜してきた私の新聞連載をきっかけに、京都市在住のE代さん(68)から調査の依頼がありました。調べた結果、広島市で暮らしている母のH子さん=1929(昭和4)年生まれ=が戦時下、女子挺身(ていしん)隊として岡山県の倉敷紡績(現クラボウ)で働いていた頃の年金を見つけ出すことができたのです。

 2019年、H子さんに100万円以上が振り込まれました。2カ月ごとの年金も増額されます。振り込みの半月後、E代さんから電話がありました。「母は本当に喜んでいます。暗い青春時代を過ごし、戦時中に年金があることも知らなかったのでなおさらです」

 お礼の言葉に加えて、17年に亡くなったH子さんの姉のF枝さん=1927(昭和2)年生まれ=の年金調査も依頼されました。戦時中の勤め先は、同じ倉敷紡績とのことでした。

 間もなくして、広島市に住むF枝さんの息子のY造さん(68)から電話がかかりました。F枝さんの年金に関する質問をいくつかした上で、見つかれば新たな年金としてもらえる確認もできたため、Y造さんに必要書類一式を送りました。

 約2週間後、書類が返送されてきました。相談票には「会社名は倉敷紡績、勤務期間は小学校卒業後3年くらい勤めたと言っていたことを記憶している」と記入されていました。

 調査に取り掛かり、申請書類を年金事務所に提出して約3カ月後、F枝さんの倉敷紡績の厚生年金記録が見つかりました。加入期間は44(昭和19)年10月~45(同20)年8月。F枝さんは90歳で亡くなったので、さかのぼって支給される年金額は115万円でした。

 年金が振り込まれて、Y造さんからお礼の電話をいただきました。続いて、E代さんからも。H子さんも電話口でこう言ってくれました。「私も姉もつらい戦時下を過ごしましたが、年金が見つかって子どもや孫を少しでも喜ばせることができてうれしいです。ありがとうございました」

 戦時中、女子挺身隊に動員されて働いた―。思い当たる人はいるのではないでしょうか。(年金コンサルタント)

柴田さんの連絡先 〒333―0802埼玉県川口市戸塚東4の25の4、産友社会保険労務士事務所。☎048(296)2075、ファクス048(296)5914

(2021年11月5日朝刊掲載)

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