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「発症なくても手帳を」 広島市長 「黒い雨」交付要件巡り

 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」体験者への被爆者健康手帳の交付を巡り、広島市の松井一実市長は4日、これまで交付の要件とされてきたがんなどの発症の有無にかかわらず、雨に遭った事実を基準に判断するよう国に求めていると明らかにした。

 松井市長は記者会見で、新たな認定要件を検討している国との協議内容について「手帳は被爆した事実を証明するもので、病気の発症とは切り離して考えるべきだと伝えている」と説明。現在の国の救済対象区域外であっても黒い雨に遭った事実が確認できれば、直ちに手帳を交付するべきだとの考えを示した。

 国は現在、原爆投下時に救済対象区域内にいた住民に健康診断をした上で、がんや白内障など11疾病と診断されれば手帳を出す「2段階」の制度を採っている。しかし7月の広島高裁判決は区域外で雨に遭った原告も含め、発症を要件とせずに全員を被爆者と認定した。菅義偉首相(当時)は上告を断念し、原告以外も救済すると表明。認定要件を見直す検討に入った。

 判決確定から3カ月が過ぎた点に関し、松井市長は「国は判決と首相発言、従来の救済手続きとのバランスを考えており、自分が担当者でもすぐには難しい」と述べ、検討に時間がかかる現状には理解を示した。

 また松井市長は、延期されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が来年1月に米ニューヨークで開かれることを歓迎。市長や平和首長会議会長の立場での発言機会を確保したいとした。(明知隼二)

(2021年11月5日朝刊掲載)

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