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ゲン閲覧制限要請を撤回 松江市教委 手続きに不備

 松江市教委が漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を小中学校に要請していた問題で、市教委は26日、臨時の教育委員会議を開き、要請を撤回することを決めた。市教委の意思決定の過程に不備があったとして、「ゲン」の閲覧をめぐる今後の取り扱いは各学校に一任する。(樋口浩二)

 22日に続き問題を協議した会議には5人の全委員が出席。「要請の撤回が妥当」とした上で、その後の対応は「学校の自主性を尊重する」ことを全会一致で決めた。

 市教委の清水伸夫教育長は会議後の記者会見で「決定には粛々と従う」と明言した。28日に臨時の校長会を開き、図書館を持つ市内の49校に要請の撤回を伝える考えを明らかにした。

 撤回を決めた最大の理由として、内藤富夫委員長は、市教委事務局が要請を決めるまでの「手続きの不備」を挙げた。小中学校の図書館から「ゲン」の撤去を求めた陳情を市議会が全会一致で不採択とした後、教育委員に諮らず、事務局内の協議だけで閲覧制限を決めた点を問題視した。

 市教委が要請の根拠とした「『ゲン』の暴力的な描写」の存在は全委員が認めたものの「評価が割れている」(内藤委員長)とし、判断理由に含めなかった。子どもの知る権利や表現の自由などのテーマも議論したが、委員の意見はまとまらなかった。

 市教委は市議会が陳情を不採択とした12日後の昨年12月と、ことし1月の2度にわたり、小中学校に「ゲン」の閲覧制限を要請。市教委が今月20日にまとめた調査では、保有する43校中42校が従っていた。

 閲覧制限をめぐっては、下村博文文部科学相が21日の記者会見で「子どもの発達段階に応じた教育的配慮は必要だと思う」と理解を示す一方、政府・与党内からは市教委に慎重な対応を求める声も出ていた。

はだしのゲン閲覧制限問題
 広島市中区出身で昨年12月に亡くなった漫画家中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」について、松江市教委が書庫に収める閉架とし、貸し出しもやめるよう小中学校に求めた。市教委によると、発端は昨年8月、市議会に提出された「ゲン」の撤去を求める陳情。同12月に不採択となったが、「平和教育の参考書」「不良図書」との市議からの賛否に市教委が配慮。「一部の過激な描写が子どもの発達上好ましくない」との判断で、閲覧制限を決めた。

(2013年8月27日朝刊掲載)

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