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8・6惨状語る日用品 原爆資料館で企画展

 原爆投下後の焼け跡から見つかった生活用品を集めた企画展「焼け跡もの語り」が原爆資料館(広島市中区)東館で開かれている。現物資料やパネルなど約190点を並べ、原爆で奪われた市民の暮らしや、被爆者たちの無残な体験を伝える。無料。来年2月13日まで。

 注ぎ口が溶けて変形し、密閉状態になったビール瓶は、中身の液体が残ったまま。酒が配給対象だった当時の状況の説明文とともに見せる。ゆがんだ化粧クリームの瓶は、労働力不足を補うため外で働くことが多くなった女性を意識した化粧品の広告と一緒に展示。熱線で表面が溶けた瓦、遺族が形見として大切にしていた湯たんぽなどもある。

 パネル展示では、爆心地から約1・8キロの段原国民学校(現段原小、南区)で、救助活動に当たった加藤義典さん(93)=西区=の絵を紹介する。猛火が迫る中、加藤さんは校舎の下敷きになった子どもから「私は助からん。舌をかんで死ぬから逃げて」と促されたという。居合わせた教諭たちと手を合わせ、その場を離れるほかなかった無念を絵筆に込めた。

 土肥幸美学芸員は「人々が暮らしの中にささやかな楽しみや癒やしを求めるのは、今も76年前も同じ。その暮らしや命が、一瞬にして奪われたことを考える機会にしてほしい」と話している。(小林可奈)

(2021年11月9日朝刊掲載)

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