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北朝鮮核実験 ヒロシマ悲痛な叫び 被爆者ら座り込み

■記者 森田裕美

 北朝鮮が地下核実験を発表した25日、被爆地・広島に怒りと悲痛な叫びが刻まれた。人類を苦しめ続ける核兵器を使った「政治的な駆け引き」。被爆者たちは平和記念公園(広島市中区)に座り込み、核軍縮の機運を逆手にとるかのような愚行と向き合った。

 「国際社会に核兵器廃絶への期待が高まっていただけに、残念でならない」。原爆慰霊碑前で、広島県被団協の坪井直理事長が悔しさをにじませた。

 県原水禁など他の11団体とつくる「核兵器廃絶広島平和連絡会議」が呼び掛けた約30分間の座り込み。坪井さんは、約100人の最前列で抗議の横断幕を手にした。

 終了後、引き継ぐかのようにもう一つの県被団協と県原水協の約40人が慰霊碑前に座った。県被団協の金子一士理事長は「世界の世論に逆行する挑戦だ。核兵器を外交の道具にする行為は許せない」と語気を強めた。

 オバマ米大統領は、4月のプラハ演説で「核兵器のない世界」への行動を誓った。一発の原爆に大勢の老若男女が命を奪われた被爆地は、そのメッセージにかつてないほどの希望を抱いたばかりだった。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の岡本三夫共同代表は「許されない行為」と批判した上で「六カ国協議などでの外交努力が必要」と強調した。在日本朝鮮人被爆者連絡協議会の李実根(リシルグン)会長は「核兵器が人類にとって絶対悪であると深く理解し、実験をやめてほしい」と声を絞り出した。

 「言語道断の行為だ」。広島市の秋葉忠利市長は緊急に記者会見した。「挑発的な行動が、核保有国や核保有願望国の核開発を加速させ、世界の平和と安定の構築を損ねる」と指摘し、金正日(キムジョンイル)総書記に抗議文を送る考えを示した。広島県の藤田雄山知事や廿日市市の真野勝弘市長たちも相次いで抗議のコメントを出した。

「憤り覚える」 IPPNW支部と広島県医師会抗議

 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部と広島県医師会は25日、北朝鮮の核実験に抗議する文書を発表した。国防委員長である金正日総書記に届けるよう依頼するメッセージを添え、IPPNW北朝鮮支部(平壌)へ電子メールで送った。

 「人間の生命と健康を守る医師として強い憤りを覚える」と核実験を非難し「核兵器がいったん使われれば、地球規模の破滅が起こることを認識しなければならない」と訴えている。

(2009年5月26日朝刊掲載)


反核NGOが非難 東京で軍縮促進会合

■記者 道面雅量

 北朝鮮の核実験強行は25日、東京都内で核軍縮促進の会合を開いていた非政府組織(NGO)にも失望や怒りを広げた。

 この日、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」の共同議長、川口順子元外相と「日本NGO・市民連絡会」との第二回意見交換会が外務省であった。そこへ届いた一報に、連絡会共同代表で日本反核法律家協会理事の内藤雅義氏は「極めて遺憾で許せない」と強調した。

 川口氏のアドバイザーを務めるピースボート共同代表の川崎哲氏は「核拡散の背景には、核大国が包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効すら実現できていない現状がある」と指摘。「いよいよ核軍縮を加速しなければ」と力を込めた。

 連絡会共同代表で「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子氏は「これを機に日本の核武装や『核の傘』維持の主張が勢いづくようでは、北朝鮮が依拠する核抑止の論理にますますはまってしまう」と警鐘を鳴らした。

(2009年5月26日朝刊掲載)

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