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原爆文学落選 関係者は落胆 世界記憶遺産

 市民団体「広島文学資料保全の会」(土屋時子代表)と広島市が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)登録を目指し、共同申請していた原爆文学関連資料は10日、国内推薦の選定から漏れた。関係者の間に落胆が広がった。

 文部科学省から落選の知らせを受けた市文化振興課の横山徹也課長は「大変残念だ。原爆の被害実態を伝える資料の重要性が、国境や時代を超えて価値があることに変わりない」と強調。「保全の会と協議し、今後の対応を決める」とした。

 ユネスコの制度改正を受け、文科省が国内推薦の公募を始めたのが8月。締め切りまで約2カ月しかなく、土屋代表は「地域で盛り上げる時間が足りなかった」と無念さをにじませながら「審査員の構成や他の申請状況などの情報が、以前と違い非公開になった。審査の透明性にも問題があると思う」と指摘した。

 今回申請したのは、被爆作家の峠三吉と原民喜、栗原貞子が残した日記やメモなどの直筆資料5点。2015年度に続く挑戦だった。民喜のおいの原時彦さん(87)=南区=は「資料を通して、決して戦争を起こしてはならないと世界へ知ってもらいたい。負けるわけにはいかない。もう一回挑戦を目指す」と次を見据えた。(桑島美帆)

(2021年11月11日朝刊掲載)

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