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被爆体験伝えねば…追悼祈念館が聞き取り始める 広島

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)は28日、本年度の被爆体験の聞き取り事業を始めた。初日は職員2人が福山市神辺町の高松勝さん(85)方を訪ね、68年前の体験を聞いた。

 高松さんは、爆心地から約3キロ離れた勤務先の広島陸軍兵器補給廠(しょう)(現広島市南区霞)で被爆。多くの同僚が建物の下敷きになり「助けてやれんままほとんどが亡くなった」という。避難してきた人に水を与えると息を引き取った記憶も振り返った。

 古里の福山市内に戻った戦後「被爆者に偏見があったけえ」と、証言を避けていた。しかし昨年小学校で証言活動を開始。「1発の原爆で町がのうなる。物が言えんようになる前にその恐ろしさを伝えんといけん」。決断の理由をそう語った。

 この日の聞き取りは約1時間半に及んだ。事業は高齢や病気で手記を書くのが難しい被爆者のために2006年度にスタート。本年度は公募に応募した11人から聞き取り、来年3月までに体験記にまとめ、館内で公開する。(水川恭輔)

(2013年8月29日朝刊掲載)

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