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戦地から絵手紙 本に収録 広島県府中町の谷田さん、80年保管

 第2次世界大戦中に旧満州(中国東北部)へ赴いた兵士から届いた絵手紙を、谷田(旧姓山田)悦子さん(92)=広島県府中町=が約80年間、大切に保管してきた。温かい画風で現地の様子が描かれている。今夏出版された「伊藤半次の絵手紙 戦地から愛のメッセージ」(伊藤博文編著、集広舎)に収録されている。

 差出人は、現在の新見市出身だった堀田熊雄さん。谷田さんが通っていた滋賀県内の女学校で戦地の兵士に慰問袋を送ることになり、姉の婚約者の堀田さんに宛てた。その返信として1943年ごろ7枚が届いた。

 現地の日常をつづる文章に、串団子を売る商人や、子どもたちなどを描いた色鉛筆画が添えられている。「私の親が牧師だったため、敵国側の人間だと学校でいじめられていた時があった。手紙が心の支えになった」と振り返る。

 だが、堀田さんが生きて帰ってくることはなかった。姉にもミカン箱いっぱいの絵手紙を送ってきたが、戦後に母がすべて処分した。谷田さんが受け取った分だけは、74年に夫の仕事で広島へ移り住んで以降も、堀田さん創作の童話とともに手元に置いてきた。

 老いを重ね、寄贈先を探していた昨年、伊藤博文さん(52)=福岡市=とつながった。伊藤さんは、沖縄で戦死した祖父の半次さんが前任地の旧満州などから家族へ送っていた手紙の展示会を開いている。

 「堀田さんの手紙は、愛情あふれるかわいらしいタッチ。祖国に残した人を思う気持ちは、私の祖父と同じだ」と伊藤さん。「絵手紙を通して、戦地で命を落とした兵士の思いを伝えていきたい」。今後は伊藤さんが堀田さんの絵手紙も保管し、企画展や平和学習に活用していく。272ページ、2200円。(桑島美帆)

(2021年11月16日朝刊掲載)

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