×

ニュース

映画で高める反核の機運 下関の市民団体 10フィート作品上映へ

 市民が資金を出し合い米国から原爆の記録フィルムを買い取る草の根運動「10フィート運動」で制作された原爆の記録映画を上映しようと、山口県下関市の市民団体が約5年ぶりの上映会を11月30日に開くことを決めた。「会発足30年を機に、核兵器反対運動の機運を高めたい」と意気込んでいる。(藤田龍治)

 下関市の医師赤司暸雄さん(86)を中心に、戦争の恐ろしさを伝えようという市民有志が1983年7月に結成した「10フィート映画を上映する下関市民の会」。赤司代表が購入した16ミリフィルムと映写機を使い、小学校の集会や夏の「しものせき馬関まつり」などで、定期的に上映したり貸し出したりしてきた。

 しかし、次第に上映会の参加者が減り会員の高齢化も進んで、約5年前を最後に上映会は途絶えた。全盛期は約250人いた会員も現在は約60人に減り、大半が60代以上。平和を訴えて市内を歩く8月の「市民平和ウォーク」は続けているが、昨年から映写機と16ミリフィルムの所在も分からなくなった。

 ことし7月中旬の運営委員会で「会発足30年を機に、もう一度上映会を開こう」と声が上がり、カンパを募って10フィート映画のDVDを購入。8月27日夜開いた同委員会で、11月30日午後に下関市内で「にんげんをかえせ」の上映会を開くことを正式に決めた。語り部を呼ぶ計画もあり、会場などは今後決めるという。

 発足当初から関わる事務局長の寺見悟さん(61)は「言葉で語る人が減る中、ありのままを写した映像で核の恐ろしさを伝えたい」。赤司代表は「時間がたって風化が進み、戦争の悲惨さを知らない世代ばかりになってしまった。二度と戦争を起こしてはいけないという思いを再認識してほしい」と話している。

10フィート運動
 米国立公文書館などに保存されていた原爆被害を記録したカラーフィルムを、10フィート(約3メートル)を一単位に市民のカンパを募って買い戻す草の根運動。1980年代を中心に運動が盛り上がり、買い取ったフィルムを基に「にんげんをかえせ」など3本の記録映画が制作され、国内外で上映された。

(2013年8月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ