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中央図書館 広島駅前へ 市、エールエールA館に移転方針 にぎわい創出へ25年度にも

 広島市は、中央図書館(中区)をJR広島駅前にある商業施設「エールエールA館」(南区)に2025年度にも移転させる方針を固めた。老朽化が進む図書館の移転先として、中国地方で最も乗降客が多い広島駅前を選んだ。駅前の図書館は全国で増えており、市はにぎわいの創出効果も期待。「広島の魅力を発信する場にもしたい」としている。(新山創)

 中央図書館と同じ建物内にある映像文化ライブラリーと、近くのこども図書館とともに移す計画で、3施設の延べ床面積の合計は約1万平方メートル。A館は地下2階、地上12階建てで、1フロアの面積は約3500平方メートル。今の広さを維持したまま移転すれば、3フロア以上が必要となる。核テナントである百貨店の福屋を含め、既存店の区域を減らすことになるとみられる。

 中央図書館は市中心部の中央公園(中区)にある。年間約39万人が利用するが、約半世紀前の1974年に建てられ、現在の耐震基準を満たしていない。市は今年9月、公園外も含めて移転させる方向性を打ち出し、広島駅周辺も候補地としていた。同月にはA館を管理運営する第三セクターの広島駅南口開発(南区)が市に図書館の移転検討を要望していた。

 市は、駅とA館が25年度末までに歩行者専用橋でつながり利便性が高まることや、A館が81年以降の新耐震基準を満たしている点などから適地と判断した。広島駅南口開発は「図書館を誘致できれば、人が集まり既存テナントにもメリットがある。玄関口のにぎわいにつながる」としている。福屋も誘致に賛同しているという。

 平和文化の情報拠点として、被爆地の思いや歴史を学ぶエリアを設ける構想もある。市の幹部は「市民サービスの向上に加え、広島の魅力を県外や国外から訪れる多様な人に発信する場を目指したい」とする。

 JRの駅や駅前のビルに公立図書館が入る事例は全国で増えている。18年には周南市が徳山駅ビルの1~3階に市立図書館をオープン。17年には兵庫県明石市の明石駅前の複合ビル4階に市民図書館が移転。同年に茨城県土浦市の土浦駅前の複合ビル2~4階に市立図書館が入っている。

(2021年11月18日朝刊掲載)

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