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年金 もらい忘れていませんか? 柴田友都 <6> 思い込み注意

勤め先 会社でない場合も

 埋もれた年金を見つけている「年金探偵」として私が出演したテレビ番組を見て、広島市在住のO吉さん(60)から2019年に手紙が届きました。内容は、父のS造さん=1930(昭和5)年生まれ=の年金相談でした。

 S造さんは実家のパン店を30歳で継ぎ、55歳まで働いた後、68歳まで塗装工場に勤めました。今は塗装工場の厚生年金と国民年金で暮らし、少し認知症の症状が見られるそう。そんなS造さんに以前、日本年金機構から「あなたの年金と思われる記録があります」と通知が届いたのです。

 通知に記載されていた加入期間は、49(同24)年4月~51(同26)年10月でした。ところが、S造さんはその頃、会社に勤めた記憶がないそう。そのままにしていたところ、息子のO吉さんが「父の年金記録なのか調べてほしい」と私に相談してきたのです。

 調査を引き受けることにし、書類一式をO吉さんに送ると、約10日後に日本年金機構の通知も同封されて書類が返ってきました。調査の対象期間がO吉さんの生まれた年よりも前だったため、母のY代さんに詳しく聞くことにしました。

 私は勘を働かせて、「S造さんが独身時代に米軍キャンプや駐留軍で働いたことを聞いていませんか」とY代さんに尋ねました。すると、神戸の米軍キャンプで働き、チョコレートやガムをもらったという話を思い出してくれました。さらに「PX」と呼ばれた売店や配車場の「モータープール」など、働いていた場所をS造さんに確認してもらい、モータープールだったことも分かりました。

 これらの情報を基に調査を進めると、米軍キャンプの年金記録が見つかりました。S造さんに約310万円の年金が支払われ、2カ月ごとの年金も1万8千円増えることになりました。

 後日、O吉さんから電話があり「父の勤め先は会社とばかり思い込んでいました。私たちだけでは見つけることができなかったと思います」と喜んでいただきました。5千件以上の年金を見つけてきた私の経験が役立った事例です。(年金コンサルタント)

柴田さんの連絡先 〒333―0802埼玉県川口市戸塚東4の25の4、産友社会保険労務士事務所。☎048(296)2075、ファクス048(296)5914

(2021年11月19日朝刊掲載)

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