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被爆者運動 足跡たどって 昭和女子大で集大成の特別展

 昭和女子大(東京都世田谷区)の学生たちが、被爆者運動の歩みをたどる特別展「被爆者の足跡―被団協関連文書の歴史的研究から―」を学内の光葉博物館で開いている。日本被団協が保存する資料を整理して体系化し、展示会を開いてきた集大成。学生たちは「生き残った負い目や心身の苦しみにあらがい、運動を続けてきた被爆者の思いを知ってほしい」と訴える。

 展示は3部構成。第1部で被爆者たちの足跡を、原爆投下から現代までの運動を通して振り返る。1956年の被団協結成、「ノーモア被爆者」の運動が世界へと広がった動き、核兵器禁止条約が今年1月に発効したことなどを年代別に伝える写真入りパネルを展示する。

 第2部は被団協が80年代に実施した被爆者調査の結果などを紹介。被爆者が体から消えない傷や後遺症への恐怖を抱える一方、死者の姿が脳裏に焼き付くなど、生涯にわたって心身両面で苦しんできた実態を浮き彫りにした。

 第3部では、被爆体験を背負って生きる個人の思いを伝える。16歳の時に広島市の自宅で被爆し、母と妹を失った元被団協代表委員で被爆者援護法の制定に尽力した故岩佐幹三さんにインタビューした内容を紹介。出産直前に広島で被爆し、兵庫県被団協の前身組織を設立した女性の手帳も展示している。

 東京を拠点とするNPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」が被団協と連携し、被爆者運動の議事録や手紙などの資料を収集。同大の松田忍准教授(日本近現代史)の呼び掛けで2012年度から学生たちと一緒に計6713点を整理し、目録を作る作業を進めてきた。

 これまで関わった学生は100人以上。授業ではないため、夏休みや週末に集まって作業を進めた。18年度からは学内で成果を毎年発表。被爆者の心の傷を伝えるパネルなども作り、展示方法に工夫をこらした。

 4年間活動してきた大学院2年吉村知華さん(24)は「原爆被害で生きる力を失いそうになりながら、運動を続けてきた歴史があると知った。一つ一つの資料の重みを感じてほしい」と話す。27日まで。午前10時~午後5時。日曜、祝日は閉館。入場無料。(中川雅晴)

(2021年11月22日朝刊掲載)

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