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戦時下 すずさんの苦悩 安来で「この世界の片隅に」原画展

 戦時下の呉市などを舞台に、アニメ映画でも人気を博した広島市出身のこうの史代さん(53)の漫画「この世界の片隅に」の原画展が、安来市の市加納美術館で開かれている。細部まで丁寧に手描きした原画からは、戦時中の1人の女性の生活や苦悩が浮かび上がってくる。12月23日まで。

 原画は、主人公のすずが段々畑から呉湾の海岸線を写生し、憲兵から激しく詰め寄られるシーンや、せりふが入っていないものもある。当時の日本の出来事を記した年表もあり、戦時中を想像しやすくする工夫も。自ら持ち込んだ漫画や電子版と読み比べる人も多いという。

 こうのさんが制作時に、時代背景などを調べた取材メモや、執筆に使った文房具も並べた。現在は1944年夏から45年春までを描いた場面を展示。今月27日から、米国が原爆を広島に投下した45年8月を含む場面などに入れ替える。

 フィリピンの日本人戦犯の恩赦を求めた加納莞蕾(かんらい)の活動を通して平和を希求する美術館として今回の展示を企画。千葉潮館長(61)は「親しみやすい漫画を通して、当時の暮らしを思い浮かべ、平和の大切さを考えるきっかけにしてほしい」と呼び掛けている。同館☎0854(36)0880。(高橋良輔)

(2021年11月22日朝刊掲載)

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