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論点・島根原発2号機再稼働 住民説明会より <1> 安全対策

 中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町)の再稼働を巡り、県や原発30キロ圏の4市で、地元同意の判断に向けた議会などの動きが活発化している。一方、県民の議論は深まっているとは言えない。県と松江、出雲、雲南、安来の4市、中電が10、11月に開いた住民説明会での関係省庁や中電の説明、質疑を基に論点を整理する。(松本大典)

断層やテロ 不安拭えず

 「福島のような事故を二度と起こさないための新規制基準。ただ、事故が二度と起きないと保証するものではない」。原子力規制庁と中電は住民説明会で繰り返した。

 島根原発は9月15日、2011年の東京電力福島第1原発事故の教訓を生かした国の新規制基準の適合性審査に合格。最新の知見を基に周辺で起こりうる地震や津波、火山噴火、竜巻などを想定し、約6千億円を投じた安全対策が進む。新たな知見が出てくれば「バックフィット」と呼ばれる考え方で、審査通過後の施設にも反映させるという。

 これに対し、説明会では疑念が相次いだ。宍道断層の長さなどから820ガルとした地震動の想定には、東日本大震災などで千ガルを超えた地域もあるとして「より安全の側に立って数値を見直すべきだ」と複数の参加者が指摘した。

 北朝鮮のミサイルやサイバーテロの備えについて「原子力災害の枠組みでは想定していない」「公の場では言えない」などと明快な回答を避けた国の姿勢に不満の声も漏れた。

 原子炉の安全対策では電源や注水機能の喪失といった重大事故も想定。津波の影響を受けない高台にガスタービン発電機を備え、構内の各所にポンプを配置する。それでも炉心損傷などで放射性物質の放出が避けられない事態となった場合に備え、放出量を千分の1以下に抑えるフィルター付きベント(排気)設備を導入。中電の幹部は「拡散を抑える努力を最後まで続ける」と強調した。

 初期対応は休日夜間の常駐47人でも可能で、8時間以内には周辺に住む倍の人数が参集できると検証済み。7日間続けて対応できる水源や電源も確保しているという。しかし、ある住民は「複合災害などの混乱の中で外から人や物資が本当に集まってくるのか」と漏らした。安全性をどこまで求めるかは立場によって異なり、溝は埋まっていない。

(2021年11月23日朝刊掲載)

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