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原爆供養塔の鉢 無断加工 広島・平和公園 埋められ 花や水入らず 寄贈者の遺族「悲しい」

 平和記念公園(広島市中区)の原爆供養塔にある献花用の石製の鉢が、何者かによってセメントのようなもので埋められていたことが20日、分かった。花や水も入らない状態。鹿児島県鹿屋市の故木場昭春さんが1963年に寄贈した鉢で、遺族は「とても悲しい。元通りに戻して」と訴える。広島市は広島県警に被害届を出すことも含め対応を検討する。(筒井晴信、山田祐)

 鉢は、四角柱状の形で、縦56センチ、横62センチ、高さ56センチ。水を入れて花が添えられるよう上面には四角い穴が開いていた。

 しかし今年8月6日の平和記念式典を前に訪れた市調査課の職員が、水を入れるための穴がすべてセメントのようなもので埋められているのを確認した。中央には直径12センチの円形のくぼみがあり、表面には紫や白のビーズのような玉や、ろうそくを立てるためのような2本の金属製の突起物も埋め込まれていた。市民への聞き取りなどから、7月上旬までに何者かが細工した可能性があるという。

 木場さんは2016年に85歳で死去。長男の修一さん(60)=三重県鈴鹿市=によると、木場さんがかつて友人と平和記念公園を訪れた際、ささげられた花が地面に置かれているのを見て「あれではかわいそう」と感じ、鹿児島の石材店で鉢を作って寄贈したという。67年ごろまで公園中央の原爆慰霊碑の前に置かれ、その後、原爆供養塔の納骨室出入り口のある北側に移されたとみられる。

 今回の被害を知った修一さんは今月12日、原爆供養塔を訪れた。「心から悲しい。せめて元通りに戻し、ひっそりと置き続けてほしい」と訴える。

 市調査課は「鉢がそもそも市の所有なのか、はっきりしていない」として、これまでに県警へは届け出ず事実関係を調査している。「管轄が明らかになれば、市としての対応を考えたい」としながらも「いたずらか、慰霊目的の細工なのか意図が分からない」と戸惑う。

 散歩で来ていた西区の公務員女性(45)は「何のためにこんなことを…。驚くばかりだ。今の平和な毎日があるのは、戦争で犠牲になった方々の上に成り立っているのを知らない人が増えているのではないか」と憤っていた。

(2021年11月21日朝刊掲載)

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