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禎子の思い知って 12年の生涯 兄がつづる生誕70年

 白血病を患い、被爆10年後に亡くなった佐々木禎子さん(1943~55年)の生涯を、兄雅弘さん(71)=福岡県那珂川町=が遺族として初めてつづった本「禎子の千羽鶴」が発売された。

 A5判、160ページ。「家族にしか分からない禎子の心の描写を、多くの人に知ってもらいたい」と両親から生前聞き取った話も参考にして、生誕70年に当たる今年刊行した。

 本では、誕生から被爆、12歳で亡くなるまでを紹介。約8カ月間の入院生活も詳しく書いた。当時、父が知人の借金の保証人になり、家族は困窮。禎子さんは、心配をかけまいと、病気にもかかわらず明るく振る舞っていた。

 55年夏、中学生だった雅弘さんは、禎子さんに誘われ、入院先の病院の屋上へ星を眺めに行った。歩きにくそうな妹の手を握ると、とても細く、熱っぽかった。あらためて病気の深刻さを実感した。

 病状は悪化したが、禎子さんは折り鶴を折り続けた。自分の病気の回復を祈るだけでなく、父の借金が早くなくなるように、との思いも込められていた、という。

 小学校高学年から読めるよう、ほとんどの漢字に振り仮名を付けた。雅弘さんは「禎子が体験したくてもできなかった、かけがえのない日常を大切にし、思いやりの心を持つきっかけにしてほしい」と話している。

 学研パブリッシング、1260円。(増田咲子)

(2013年7月15日朝刊掲載)

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