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広島世界平和ミッション 紛争地に「和解」広めて ワールド・フレンドシップ・センター館長夫妻 寄付や宣伝で後押し

 被爆地から核保有国や紛争地域に市民を派遣し、平和を訴える広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)の成功を目指して、ワールド・フレンドシップ・センター(広島市西区)が支援を始めた。米国人のアイカンベリー館長夫妻は「広島が培った和解のメッセージを広げてほしい」と強く期待している。

 夫のジョエルさん(57)と妻のべバリーさん(56)は昨年七月に来日。館長を務めるセンターは、米国人で広島市特別名誉市民でもある故バーバラ・レイノルズさんが、被爆者ら四十人を率いて八カ国を巡った「広島・長崎世界平和巡礼」を実現した翌一九六五年に、「ヒロシマを世界に伝える窓口」として設立した。

 夫妻はバーバラさんの平和巡礼の精神を継承するミッションを知り、自費で四千ドル(約四十三万円)を財団に寄付。センターの会員も相次いで寄付を寄せている。

 夫妻はまた、センターを米国内に紹介したり、館長を派遣したりする米国の支援団体「アメリカン・コミティー」などを通じて、ミッションの理解者の輪を広げている。

 「広島の人びとは憎しみを捨て、報復ではなく平和を築く努力に変えた。それにはバーバラさんの行動も影響を与えているのでは…」とジョエルさん。「暴力でなく和解を求めるユニークな取り組みは、紛争地域にとって価値が重い」と強調する。

 来日前、インディアナ州でジョエルさんは救急医、べバリーさんは個人や組織同士の紛争解決の仲介人として働いていた。平和主義を唱え、歴代の館長も多く輩出してきたブレザレン教会の敬けんな信者。子供五人の独立を機に、仕事を一時中断して館長役を買って出た。

 イラク攻撃に踏み切った母国の現状を「国連を無視して、やりたいようにやる姿に失望した」とべバリーさん。ジョエルさんも「経済のために戦争をしている。石油より人命の方が重い」と残念がる。

 二人は「紛争の渦中にいる人びとは、ミッションの呼び掛けに簡単には納得しないだろう。でも、廃虚から復興したヒロシマの訴えに希望を見いだす人も多いはず」とエールを送っている。

(2004年1月26日朝刊掲載)

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