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広島で原爆被害受けた子の体験記「原爆の子」 その後の手記が今夏再出版

「きょう竹会」14年ぶり 新たに4人寄稿

 広島で原爆被害を受けた子どもたちの体験記集「原爆の子」の執筆者たちでつくる「原爆の子 きょう竹会」は今夏、それぞれがその後の半生をつづった「原爆の子 その後」を14年ぶりに再出版する。新たに4人の手記を加えた。(二井理江)

 きょう竹会が、「その後」を初めて出版したのは1999年。500冊印刷したが、関係者や広島市内の公立中学校に寄贈するなどして、あっという間になくなった。

 その時、手記を寄せた33人のうち、6人が他界。入院している人もいる。「今のうちに、きちんとした形で後世に残したい」。メンバーのそんな思いに加え、「原爆の子」を編集した長田(おさだ)新(あらた)・広島大名誉教授(1887~1961年)の四男、長田五郎・横浜市立大名誉教授の勧めもあって、再出版を決めた。

 追加したのは、原爆投下時は小4だった寺尾(旧姓森滝)安子さん(東京)たち4人の手記。さらに、きょう竹会の早志(はやし)百合子会長(76)=広島市安佐南区=の長女で、中学時代から事務作業を手伝ってきた山田文子さん(50)=中区=が、再出版の経緯をつづっている。表紙には、前回同様、「原爆の子」執筆者の一人で、グラフィックデザイナーの故片岡修さんの作品を使う。

 早志会長は「完成したら、執筆したみんなで集まって、本を渡したい」と心待ちにしている。

 本は、8月3日に発行する予定。ハードカバーのA5判で約250ページ。1470円。印税は「子どもたちのために」と、諸費用を引いた後、出版する「本の泉社」(東京)から国連児童基金(ユニセフ)に寄付してもらう。

「原爆の子」
 教育学者で後に広島大名誉教授になる長田新氏が、教え子とともに編集した原爆被害の体験記集。小学4年生から大学生まで1175人が書いた手記のうち105編と、序文に84人の手記の一部を収録して1951年に岩波書店から発行した。英、ノルウェー、インドネシア、ロシアなど13言語に翻訳されている。日本語版は単行本で累計18万部、文庫本で上下合わせて同8万部のロングセラーとなった。現在はワイド版文庫で読むことができる。52年に「原爆の子」(新藤兼人監督)、53年に「ひろしま」(関川秀雄監督)として映画化された。

(2013年7月23日朝刊掲載)

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