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震災避難 現状を聞く 社会学者開沼さん「支援が必要」 松江

 「『フクシマ』論」などの著作で知られる社会学者の開沼博さん(29)が1日、島根県松江市内のホテルで、東日本大震災の避難者や移住者と交流した。支援者を含む約20人と、生活の悩みや課題を語り合った。

 原子力発電所運転指導員の大木隆司さん(63)は、福島第1原発がある福島県双葉町から、仕事で妻と同市に移った。地元の支援に感謝する一方で「親戚、友人がいなければ、食事も景色もつまらない」と心情を吐露。退職後は長男が暮らす仙台市での定住を考えている。

 同県富岡町から松江市に避難した渡辺巻子さん(80)も「東北弁が通じず、なるべく話さないようにしている。震災から『立ち上がる』という感覚は持てない」とこぼした。

 ほかの避難者からも「島根では、よそ者気分が拭えない。定住するかどうかは分からない」などの声もあった。

 開沼さんは「震災から時間がたち、法律や予算で解決しない問題も生じた。被災者の思いを受け止める支援体制が必要」とした。

 開沼さんは8月31日にも同市内で講演した。原発が地方に経済的な豊かさをもたらす一方、都市部に電力を供給する相互依存関係について「震災後も変わっていない。原発への賛否ではなく、現実を踏まえた立地地域の在り方を考える必要がある」と問題提起した。(明知隼二)

(2013年9月2日朝刊掲載)

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