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戦争遺構や住居跡 今も 周防大島の大水無瀬島ツアー 記者も体験 兵舎跡・井戸 サルの鳴き声

 周防大島町の南東沖に浮かぶ無人島「大水無瀬島」を探検する日帰りツアーを、住民グループ「県東部海域にエコツーリズムを推進する会」が開いた。トレッキングしながら住居跡や旧海軍の戦争遺構などを巡るコースに、記者も参加した。(川井直哉)

 同町片添ケ浜からチャーター船で約30分。約60年前に無人となった島は周囲約4キロで急斜面が多く平地も少ない。町内や岩国、広島市から参加した6人と一緒に、岩の多い南部の海岸から上陸した。

 藤本正明会長(67)の案内で、南側にある最高峰の大水無瀬山(232メートル)に向かって出発。鳥の鳴き声に混じって、時折サルがほえる声も響く。約20年前に誰かが持ち込んだサルが野生化したのだという。

 2時間ほどで、戦争のために作られた施設が残る山頂に到着。本土防空のため戦時中に設置された旧海軍の照聴所で、空中聴音機やサーチライトの台座などが点在する。藤本会長の説明で、縦約18メートル、横約9メートルの兵舎跡などを見学した。

 さらに約3時間かけて、島北部の集落跡に移動。戦後、旧満州(中国東北部)から引き揚げてきた家族たちが住んでいた。ロープの材料となるマフランなどを栽培していたといい、井戸や皿の破片など生活の痕跡が確認できた。

 参加した同町日前の升井勇吉さん(80)は「この島の人がどう暮らしていたのか興味があった。戦争遺構も詳しく知らなかったので驚いた」と話していた。藤本会長は「大島には、まだまだ豊かな自然や史跡が残る。今後もツアーで発信していきたい」としている。

(2021年11月30日朝刊掲載)

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