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連載・特集

広島世界平和ミッション 南アフリカ編 誓いと交流 体いっぱい 歌った 踊った 語り合った

 ともに歌い、踊り、語る―。平和の喜びや願いを体いっぱいで表現する。それが南アフリカ共和国の交流の流儀である。

 広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)の第一陣は、初の訪問地となった南アフリカの学校やコミュニティーなどを駆け巡った。行く先々で笑顔が待っていた。惨禍を乗り越え、再生した町、広島からのゲストを誰もが心待ちにしてくれていた。

 黒人居住区ソウェトでは、失業中の若者たちがズールー民族に伝わるダンスで歓迎してくれた。ミッションのメンバーも輪に加わって、野性的なリズムでステップを刻んだ。

 高校の教室を借りた教会では、合唱隊の力強いハーモニーに心を揺さぶられた。集まった人々とろうそくの火を見つめて、静かに祈るキャンドルサービスもした。

 どれも日本では味わえない体験に、ミッション参加者は当初、戸惑い気味だった。でも、思い切って飛び込めばたちまち友達になれた。おおらかな南アならではの醍醐味(だいごみ)だった。

 出会った人々の大半は、被爆者の生の声を初めて聞いた。想像を超えた被害の実態に顔を覆い涙を流した。強い日差しの下、額に汗を浮かべて証言を聞く幼い兄弟の横顔も忘れられない。

 あっという間に八日間は過ぎた。広島が培った「平和と和解の精神」を伝え、信頼を深め合った旅だった。(文と写真・岡田浩一)

(2004年5月17日朝刊掲載)

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