「黒い雨」救済へ初会合 国・広島県・市 認定指針改定議論へ
21年12月1日
広島原爆の直後に降った「黒い雨」の被害を巡り、厚生労働省と広島県、広島市などは30日、訴訟で被爆者と認められた原告以外の被害者の救済に向けた協議の初会合を開いた。次回以降、被爆者として認定する指針の改定について議論する。協議には長崎県、長崎市も参加した。
会合はオンラインで非公開だった。広島県と市によると、原告全84人を被爆者と認めた7月の広島高裁判決と、「原告と同じような事情にある方」の救済を検討すると明記した首相談話の内容などを確認した。
厚労省は、原告に共通する事情として①直接黒い雨に遭った②相当数が自宅以外で雨に遭った③国が定める11疾病の発症④雨に遭った後も元の生活を続けた―の4項目を挙げた。指針の改定案ではないと説明したという。県と市は高齢化を踏まえ、病気の発症を条件とせずに直ちに認定するなど早期救済を求めた。
国が示した4項目について広島県被爆者支援課の二井秀樹課長は取材に「次回以降の会合で国側が指針案として示したら、言うべきことは言う」と話した。
後藤茂之厚労相は26日の記者会見で、原告以外の被害者を対象にした被爆者認定制度の運用を2022年4月に始めたいと表明した。厚労省原子爆弾被爆者援護対策室は「降雨や健康影響の有無をどのような手順で確認するかが難しい。4県市の意見を丁寧に聞き検討したい」とした。(明知隼二、松本輝)
被害者「時間がない」 早期の制度整備求める
「黒い雨」訴訟の原告以外の被害者を巡る厚生労働省や広島県、広島市による初会合では、新たな被爆者認定の指針について踏み込んだ議論はなかった。老いる被害者たちからは早期救済を求める声が上がった。
県と市によると、政府が7月下旬に原告以外の救済を検討すると表明して以降、被爆者健康手帳の交付申請が急増し、1100件を超えた。申請した前田勝司さん(85)=同市佐伯区五日市町下河内=は「まだ申請していない被害者もいる。私たちには時間がない。幅広く救済する制度を早く整えて」と求めた。
県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は初会合について「やっと始まったかという感じ」と受け止める。国の援護対象区域の線引きで、多くの被害者が被爆者と認められてこなかった経緯を踏まえ「線引きにこだわらず、黒い雨を浴びた人は救済するべきだ」と訴えた。(松本輝、小林可奈)
(2021年12月1日朝刊掲載)
会合はオンラインで非公開だった。広島県と市によると、原告全84人を被爆者と認めた7月の広島高裁判決と、「原告と同じような事情にある方」の救済を検討すると明記した首相談話の内容などを確認した。
厚労省は、原告に共通する事情として①直接黒い雨に遭った②相当数が自宅以外で雨に遭った③国が定める11疾病の発症④雨に遭った後も元の生活を続けた―の4項目を挙げた。指針の改定案ではないと説明したという。県と市は高齢化を踏まえ、病気の発症を条件とせずに直ちに認定するなど早期救済を求めた。
国が示した4項目について広島県被爆者支援課の二井秀樹課長は取材に「次回以降の会合で国側が指針案として示したら、言うべきことは言う」と話した。
後藤茂之厚労相は26日の記者会見で、原告以外の被害者を対象にした被爆者認定制度の運用を2022年4月に始めたいと表明した。厚労省原子爆弾被爆者援護対策室は「降雨や健康影響の有無をどのような手順で確認するかが難しい。4県市の意見を丁寧に聞き検討したい」とした。(明知隼二、松本輝)
被害者「時間がない」 早期の制度整備求める
「黒い雨」訴訟の原告以外の被害者を巡る厚生労働省や広島県、広島市による初会合では、新たな被爆者認定の指針について踏み込んだ議論はなかった。老いる被害者たちからは早期救済を求める声が上がった。
県と市によると、政府が7月下旬に原告以外の救済を検討すると表明して以降、被爆者健康手帳の交付申請が急増し、1100件を超えた。申請した前田勝司さん(85)=同市佐伯区五日市町下河内=は「まだ申請していない被害者もいる。私たちには時間がない。幅広く救済する制度を早く整えて」と求めた。
県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は初会合について「やっと始まったかという感じ」と受け止める。国の援護対象区域の線引きで、多くの被害者が被爆者と認められてこなかった経緯を踏まえ「線引きにこだわらず、黒い雨を浴びた人は救済するべきだ」と訴えた。(松本輝、小林可奈)
(2021年12月1日朝刊掲載)