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はだしのゲン閲覧制限 所蔵の小中 9割「開架」 松江の49校本社調査 

 松江市教委が漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を要請した問題で、市教委の要請撤回を受け「ゲン」を置く43校のうち約9割の38校が、自由に閲覧できる開架としたか、近く開架することが3日、中国新聞社のアンケートで分かった。撤回を支持する学校は全49校(小学校33校、中学校16校)中約8割を占めたが、撤回理由を疑問視する声も2割弱あった。(樋口浩二)

 アンケートは、図書館を持つ市内の全49小中学校に8月29日、郵送。3日までに全学校が回答した。

 「ゲン」を持たない5校と本が傷み閲覧できない1校を除く43校のうち、開架したのが27校、開架方針は11校だった。内訳は小学校26校、中学校12校。中学校では3日までに11校が開架した。

 図書を本棚から書庫などに移す閉架としているのは、市教委の要請以前から「児童に戦争の複雑な背景が伝わるか心配」と続ける1校だけ。「対応を協議中」が4校あった。

 市教委の要請撤回の評価は、全49校中「支持する」が39校で「支持しない」はゼロ。「どちらでもない」と無回答・不明が各5校あった。支持の理由(自由記述)では「本来学校が判断すること」と現場の自主性を尊重した点が挙がったほか、「戦争、原爆を否定する資料」と作品の内容を評価する声もあった。

 一方、49校中8校が撤回理由を批判。「マスコミ報道で撤回した印象が拭えない。根拠ある対応を」(八雲小の井田佳彦校長)「表現が過激とした要請理由と手続きの不備に絞った撤回の理由がミスマッチ」(小学校長)「過激な描写があるとの見解は撤回されていない」(中学校長)などの声があった。

 保有する43校のうち、9割以上の41校が昨年12月とことし1月の2度の要請で市教委に従っていた。うち、最初の要請で対応を保留し、2度目の要請で従ったのが14校と約3分の1を占めた。要請後も閉架しなかった学校が1校あった。

現場と隔たり

 松江市教委・清水伸夫教育長の話

 アンケート結果は、要請当時の市教委と学校現場との考えに隔たりがあったことの表れで、反省する。現場と協議する視点が欠けていた。

 要請撤回の理由を手続きの不備に絞った点には、一部の学校に不満がある。だが、現場との協議や教育委員会議も経ず、事務局の独断で一律に措置を求めた点が最大の問題だった。

 「はだしのゲン」は平和教育に有効との立場は一貫している。あくまで一部の描写が子どもに与える影響を問題視した要請だった。作品の内容についての議論は今後もしない。だが、学校図書館では教育的配慮が必要な場合もある。

はだしのゲン閲覧制限問題
 広島市中区出身で昨年12月に亡くなった漫画家中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」をめぐり、松江市教委が昨年12月とことし1月、閉架とし貸し出しもやめるよう市内の全小中学校に求めた。旧日本軍による斬首シーンなどの「過激な描写が教育上好ましくない」との判断だった。8月16日の問題発覚後、全国から批判が相次ぎ、市教委は10日後の8月26日に要請撤回を決定。同28日に校長会で小中学校に伝えた。

(2013年9月4日朝刊掲載)

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