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連載・特集

広島世界平和ミッション 第三陣の横顔 <5> 花房加奈さん(18) 広島市中区吉島西出身

市民の本音 聞きたい

 今年三月に広島市内の高校を卒業したばかり。最年少でのミッション参加となる。今は筑波大(茨城県つくば市)で、国際関係学を専攻する。将来は「国際機関で働き、平和を実現する活動がしたい」との夢を抱く。

 国際問題に関心を持ち始めたのは、小学高学年の時。国連児童基金(ユニセフ)親善大使の黒柳徹子さんが、紛争や飢餓、貧困の中で生きる発展途上国の子どもたちについてまとめた本を読んだのがきっかけである。

 本の中に、ボスニア内戦で爆弾が埋め込まれた縫いぐるみを抱きしめ、命を落とした子どもの話があった。「なんでそこまでする必要があるの?」。人間の非情さに、怒りと悲しみがこみ上げた。

 南区の宇品で被爆した曽祖父の体験を、両親から聞いて育った。その曽祖父は中学三年の時、九十四歳で亡くなった。原爆死没者名簿にその名が記載された際、「自分は平和のバトンを受け取ったのだ」と感じた。

 中学高校時代には、平和学習などで、自然に原爆以外の知識を得るようになった。旧日本軍が秘密裏に毒ガス製造をしていた竹原市の大久野島に行ったり、韓国や英国の姉妹校の生徒に、原爆資料館や平和記念公園を案内したりして、視野を広げた。

 英国の高校生は、原爆資料館で泣きだした。二歳で被爆し、十年後に白血病で亡くなった原爆の子の像のモデル、佐々木禎子さんの物語には共感してくれた。

 「ブレア英首相はブッシュ米大統領に協力的でも、英国の高校生たちは、イラク戦争に疑問を持っていた。政府と国民の考えには溝がある。ミッションを通じて、一般市民が何を思っているか本音を聞きたい」と抱負を語る。

 逆に、世界から見た最近の日本は、憲法九条の改正論議や自衛隊のイラク派遣など、国を挙げて「戦争ができる国」に向かっているように映っているのではないか―。少し不安だ。

 「日本にも平和を願い、ヒロシマを地道に伝える市民がいることを知らせるのも使命と思う。出会いを大切にし、自分自身、核兵器廃絶への思いを強めたい」。輝く瞳に、熱意がみなぎる。(おわり)

(2004年6月28日朝刊掲載)

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