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広島世界平和ミッション 被爆の2留学生健在 中国で確認 在外援護策知らず

 【上海1日西本雅実】広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)の第二陣は中国に滞在していた一日までに、被爆して帰国した中国人留学生二人の健在を確認した。南京市の王大文さん(78)と長春市の初慶芝さん(84)。在外被爆者が、日本の被爆者と同じように昨年から健康管理手当などを受けられるのを知らなかった。王さんは手当申請の前提である訪日を希望し、「平和式典に参列したい」と語った。

 王さんは、当時の満州国(中国東北部)から広島高等師範学校(現広島大)に留学中の一九四五年、爆心地から約一・五キロの校舎内で被爆。東京工業大に移り、五二年に帰国した。八一年に広島市を訪れ、被爆者健康手帳を取得したが、消息は途切れていた。

 健在が分かったのは、ミッションメンバーで広島大大学院の岳迅飛さん(32)=東広島市=が「中日両国の歴史にほんろうされた先輩の労苦に報いたい」との思いから捜し、次の訪問地の韓国に向かう直前の上海で、本人に連絡がとれた。

 王さんは南京工学院講師を八五年に退職し、妻と長男夫婦、孫の五人で暮らしていた。「今も原爆の日の出来事を思い出します。海外の被爆者にも援護があるのを聞き、うれしい」と、広島再訪に意欲を示した。

 一方、広島文理科大(同)で学んでいた初さんも爆心約一・五キロの公舎内で被爆。五〇年に帰国し、吉林大の日本研究所職員などを務めた。初さんと養女の家族は「老齢で日本に行くのは難しい。手当申請はこちらの総領事館(瀋陽市)では無理ですか」と問いかけ、在外被爆者への援護策のあり方の不備を突いた。

 広島への原爆投下時、中国人留学生は五人が被爆。二人が母国で死去し、一人は日本人女性と結婚したといわれるが、その後ははっきりしない。

情報お願いしたい

 広島市原爆被害対策部の話 強制連行された中国人被爆者についての情報はあったが、留学生に関してはなかった。ミッション関係者が帰国したら、連絡先などの情報提供をお願いしたい。

第二陣、ソウルに到着

 【ソウル1日西本雅実】広島国際文化財団が派遣する広島世界平和ミッションの第二陣は一日、中国訪問の旅を終えて上海から韓国の首都ソウルに入った。

 広島からの市民メンバー四人は、海外在住者として初めてミッションに参加する元韓国原爆被害者協会長の郭貴勲さん(80)と合流し、忠清南道に向かった。現地の大学や、ソウルの高校で被爆の受け止め方をめぐって対話し、日本の植民統治で広島に渡り被爆した人たちが多く住む慶尚南道陜川郡も訪ねる。

 郭さんは「日本政府は唯一の被爆国を掲げて核兵器の廃絶を訴えながら、戦後処理は避けようとする。そうした点にも目を向ける旅にしたい」と話した。

(2004年7月2日朝刊掲載)

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