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原爆ドーム きょう世界遺産登録25年 100年前のメダル 被爆した母追慕 全国菓子飴大品評会で授与 安佐南の益田さん入手

にじむ当時の活気

 原爆ドーム(広島市中区)の世界遺産登録から、7日で25年を迎える。前身の広島県立商品陳列所でちょうど100年前に開かれた菓子品評会の金メダルを、益田崇教さん(56)=安佐南区=が持っている。建物が壊滅する76年前の「あの日」までの姿を伝える資料。かつて近くに住んでいた母や祖父を思い出させる品でもあるという。(桑島美帆)

 1921(大正10)年4月1~15日に開催された「第4回全国菓子飴(あめ)大品評会」(現全国菓子大博覧会)で、1等賞だった167点に贈られた。直径約6センチの金属製で、「菓」を崩したようなロゴがあしらわれており、裏には亀の図柄も。「壱等賞金牌(いっとうしょうきんぱい)」と記された箱に入っていた。

 広島県菓子工業組合(西区)などによると、全国はもとより朝鮮半島や中国、米国ハワイから実に5462点が出品された。建物が完成して6年後の館内の活気をうかがわせる。

 益田さんは11月末、メダルを今治市の古物商からネットオークションで入手した。母の静江さんは、原爆ドームから約600メートル西の西引御堂(にしひきみどう)町(現十日市町)の自宅で被爆。両親や弟たち家族5人を失い、自身も42歳の時に白血病で他界した。「母たちにとって日常だった風景を追体験したい」―。益田さんは約30年前から原爆ドームの戦前の絵はがきや写真などを約200点収集してきた。

 「私にとって原爆ドームは、家族を感じる身近な存在でもある」と益田さん。「メダルを手にすると、母たちとつながった気がします」と目を細めた。

(2021年12月7日朝刊掲載)

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