×

ニュース

政府、特別史跡化へ支援 原爆ドーム世界遺産登録25年 閣僚ら継承の意義強調

 原爆ドーム(広島市中区)が世界文化遺産に登録されて25年を迎えた7日、中央政界から改めて意義を評価する声が相次いだ。政府は、「核兵器廃絶や恒久平和への発信力が高まり、後世に残す機運も高まる」として国史跡から特別史跡への格上げを目指す広島市の取り組みを支え、保存に向けて財政的、技術的な支援を続ける考えを示す。

 「原爆の破壊力をありのまま示し、半世紀以上にわたり世界恒久平和の実現への希望を表してきた象徴」。末松信介文部科学相は7日の記者会見で原爆ドームの存在意義を強調した。

 世界文化遺産に登録される前年の1995年、国史跡に指定された。学術上の位置付けが高い特別史跡の指定を受けるには、市が国に意見具申し、文化審議会が文科相に指定を答申する必要がある。末松氏は「個人としてそうあるべきだとの願いを持っている」と述べた上で、2022年度中に学術的価値の報告書をまとめる方針の市へ「より丁寧に助言するよう文化庁に指示した」と語った。

 市が5度にわたって保存工事を重ねてきたことに関しては「市の要望を踏まえて財政的、技術的な支援をしていきたい」と話した。

 被爆地広島を地盤とする岸田文雄首相(広島1区)は外相時代の16年、米国の現職大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏に原爆ドームを説明した。首相の思いは政権内で共有されており、松野博一官房長官も7日の記者会見で「被爆の記憶を後世に継承し、平和を希求していくことは唯一の戦争被爆国として大変重要なことだ」と述べた。

 野党からも同じような声が上がる。立憲民主党の森本真治氏(参院広島)は「現存する被爆建物は限られる。国から最大限の支援が得られるよう、われわれも尽力したい」と話した。

 市はさらに、平和記念公園のレストハウス(旧大正屋呉服店)や旧日本銀行広島支店など中区の被爆建物5件について、保存工事などに国の補助を受けられる国史跡指定を目指し、準備を進めている。(境信重、口元惇矢、桑原正敏)

(2021年12月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ